1話
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し――セイバーが若干早くなった歩調で、枝道に入っていく。歩幅が大きくなるのは、彼女が真剣になった時の癖のようなものだ。
語り、説明しながらでも、進む足は僅かも揺らがない。まるで歩き慣れた道のように、真っ直ぐ新しい家へと向かっている。方向感覚については、士郎も少し自信があった。が、セイバーのそれと、勘が組み合わさるとまるで勝てる気がしなかった。例えば今のように、見たこともない道で、方向だけを頼りに最短距離を進んだり。
「私とて、仮にも一国を治めていたのです。しかも、有利な札は全て手元にありました。一都市の領主に負けるわけにはいきません」
「ああ……そう言えば、セイバーって王様だったっけ」
「……。まさか、忘れていたのですか?」
「いや違うぞ! ただ、あんまり王様らしい姿を見たことがなかったから!」
手を振り慌てて訂正するが、愕然とした目は向けられたままだ。
はっきり言ってしまうと、セイバーが王だという事は、完膚無きまでに忘れていた。いや、それどころか。名高い英霊である、という事すら忘れていた。
現代に蘇った剣の英霊は、その力を発揮する機会などそう多くなく。王の重責もない生き方は、まるで普通の――当たり前にいる、少女のようであった。人並みに笑う姿に、国の重圧につぶされ続けた誰かの面影はない。それが、本当の意味で良いことか悪いことかは分からない。ただ、そんな時間があってもいいのではないかと、そう思えた。
と、ここまでは美談のようなのだが。ぶっちゃけ彼女は、普段かなりのぐーたらだった。どうやらオンオフが激しいタイプらしく、オフの彼女は全力で遊びほうけるのが普通だ。そして、オンにする機会が無いと……ただの扶養家族である。適度に仕事が無いとダメ人間になる典型だった。
まあいいでしょう。そう言うように、セイバーは進行方向に直った。しかし背中は、三度目はないと告げている。次こそは失言しないようにしようと、心に刻む士郎だった。もっとも、それでも地雷を踏み抜くからこそ衛宮士郎なのだが。
「それに、向こうが仕掛けてくるタイミングで横槍を入れておきました。ここまで悪条件が揃えば、何も出来ないのは当然でしょう」
「なんと言うか……酷くないか?」
「ありません。交渉とはそういうものです」
ぴしゃり、断言するセイバー。そこには、反論は許さないという雰囲気があった。
一言で言ってしまえば、気に入らない。もう少し、両者が納得できる形があった筈だ。しかし、それは物事を知らない素人の意見でしかなく。不満だから、で文句をつけない程度には、衛宮士郎は大人になっていた。
「まあ、私の功績のように言ってしまいましたが。やはり一番致命的だったのは、バゼットの件でしょう。よく、何でも無い事、ように振る舞ってくれました」
ふと、名前を
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