1話
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何かをして、よい方向に動くとは思っていません」
「……。セイバーってもしかして、俺の事嫌いか……?」
「いいえ、好きです。しかし、もうちょっと常識を弁えた行動をしてくれれば私の苦労も半減するのに、とは常々思っていますが」
「俺が悪かったです本当にごめんなさい」
素早く下がる頭は、妙になれた動作だった。
幾度も繰り返されたやりとりに、彼女はその程度で騙されてくれない。バゼットに向いていた白い目が、士郎の後頭部を捕らえていた。じりじりと、後ろ髪を焼くような視線に、一筋汗が流れる。
「し、しかしセイバーは交渉とか、ああいうのが上手いよな!」
「……」
「……」
ごまかすつもりで出た言葉は、実際は煽るものになっていた。セイバーの眼光が強くなり、士郎の背中は冷や汗にまみれる。バゼットはそっと距離を置いて、若干早足になっていた。
ぴりり、突き刺すような怒気に晒されて、手が震える。自爆しない話題転換はないか、脳裏で必死に言葉を浮かべて……ふう、とセイバーがため息をついた。同時に、プレッシャーも失せる。
「交渉と言えるほどの事はしていませんよ。そもそも、今回は魔道師が勝手に自爆していたのです」
「そうなのか? まあ確かに、俺も変だなとは思ったけど」
「実際、ああいう事は多いのですよ。私も、代行者として活動している時は、よく面倒が省けました」
いつの間にか戻ってきていたバゼットが、当然のように会話に加わる。
助けてくれてもいいじゃないか――視線を飛ばすが、彼女は全く気にしていなかった。むしろ、すでに忘れていた。士郎に返された視線には、何か用か、と書いてある。完全無欠のハイペースにしてマイペースだ。
「名声というものには、力があります。実態のないものなどではなく、社会的な影響力を保持しているのです。だからこそ、いつの時代であっても、権力者は名を広く浸透させようとし、その力を利用します。そして、士郎には実態はともかく大きな名声があり、その結果、相手は虚像に倒れ伏しました」
「何と言うか……難しい話だな」
「ええ、とても面倒な話です」
「難しくも面倒でもありません。貴方たちは少しくらい、名声の使い方を覚えて下さい……」
セイバーは頭を抱えて、そっと黄昏れた。
「まあ、それでも所詮は名でしかありませんし、彼らにも十分挽回する方法はありました。試してはいましたが、完全に逆効果でした」
若干胸を張りながら、セイバー。暗に、自分にならできていた、と言っているのだろうか。それが分からない士郎には、首を捻るしかない。
「向こうの学園長はあんまりこういう事が上手くなかったのか?」
「いえ、そんな事はありません。むしろこの規模の都市を治めるのには、過大なくらいの能力があるでしょう」
しか
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