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Bistro sin〜秘密の食堂へいらっしゃいませ〜
非情な常連.4
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 時間とは必要なときほど短くあるもので、いよいよ大河原の来店は明日になった。
思考を巡らせて、カレーに牛乳を混ぜてみたり、
使う香辛料を減らして独特のルーを作ってみたりと、出来うることはしたが中々臭いは消えない。
正直なところ、絶望的だった。
しかし、絶望的な状態で賢太郎は一つの発想が湧き出た。

 そして約束の日、大河原は現れた。
いつもと同じ時間、同じ席に着いていつものように目配りをする。
ところが、賢太郎はナイフセットを用意する前に料理を配膳し始める。
しかし、平泉は止めなかった。大河原も黙っている。
賢太郎が机の上に料理を置いて、初めて大河原は顔色を変えた。

「これは?」
大河原は問いかけた。
「温かい物をご所望でしたので、本日はカレーを召し上がっていただこうと致しました。ですがカレーは香りが強いので、これをご用意させていただきました。」
机の上の皿には、パン。カレーパンが一つ。

 パンに入れることで、香りをある程度閉じ込めることが出来た。使われているパンは、試作のバケット。
大河原はカレーパンを手で持ち、一口噛りついて一言。
「マズイ。」
しかし賢太郎に動じる様子はなく、大河原もカレーパンを食べてワインを飲み、そして帰っていった。

 その日の閉店後、食卓を囲んで従業員はかなり上機嫌だ。
カレーパン作戦は大成功。皆が賢太郎を、厚く褒め立てていた。
「賢太郎!よくやったじゃねえか!」「よく、思いついたね〜」「カレーを食べさせられるとは、思ってなかったよ。」
皆に賞賛されて、少し照れくさかったが「いえ、そんなことは…。」と謙遜をした。

謙遜する賢太郎に、平泉が言った。
「賢太郎くん、謙遜することはないんですよ。何より大河原さんも、いつも以上に満足気でした。」
平泉がそう言うと、東も続けた。
「おう!あの女が、酒を飲んで帰るなんてのはなかなか無いことだ!」
皆が満場一致で、賢太郎を認めた。

 「君は温かい心の持ち主なのですね。」
平泉がそう言うと、賢太郎の目からは涙が溢れていた。

「おいおい!賢太郎泣いてんのか!?そんなに嬉しかったのか〜?」
と六郎が声をかけた。
嬉しさもあったが、それだけではない。『温かい』その言葉は、賢太郎にとっては特別な意味を持っていた。
涙のまま、賢太郎は口を開いた。
「温かくなんて‥ないです。」
六郎が「何言ってんだよ〜!」と茶化したが賢太郎は続けた。
「俺は…!俺は温かくなんて無いんです。」
賢太郎の言葉に、皆が気を止めた。
「俺は、俺は…。ここに来る前は、捕まっていたんです。一年もの間、牢屋の中で‥。人を、殺そうとしたンです。でも、殺せなかった…。俺にとって、たった一人の家族だった母を殺したやつを殺せなかった…。殺すつ
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