道化師が笑う終端
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秋斗からの一報を耳に入れ、稟の思考は冷たく速く廻り行く。
十面埋伏の成功した戦場も収束に向かいつつあるが、未だ袁紹軍の抵抗は冷める事無く続いている。
猪々子の残した兵士達は新兵が多く、熱さに当てられて降伏する事すら出来ないでいた。いや……降伏しようとしなかったと言った方が正しい。
既に徐晃隊と楽進隊に斗詩の兵士達の監視は任せてもいいと判断を置き、斗詩本人は沙和に監視を命じてある。数の差は引っくり返り、曹操軍が優勢であるにも関わらず死人が出続ける。
――頭を失った軍の末路は様々、という事ですか。
黄巾の乱の時は、怯えに駆られて逃げ出すような者達に溢れていた。
反董卓連合ならば、混乱に支配され纏まりが無く、主力部隊の確固撃破と内部の強引な鎮圧にて戦が終わった。
徐州での戦では、袁家の逃亡によって終わりを迎えた。
では今回は……如何にすれば終わらせる事が出来るのか。
選択としては幾つか取れるのだが……主だったモノを上げるのならば恐怖と諦観が肝である。その為、まず稟は風との合流を図る。もはやそれぞれの部隊での個別指揮は終わらせてもいい。一個の軍として纏まった後にこの戦の収束をと決めた。
親友の旗に馬を駆って近づけば、こっくりこっくりと馬の上で船を漕ぐ風の姿に呆れが浮かぶ。
隣で腕を組んで戦場を見やる春蘭が居ればこそ、彼女はこうして安心しきっているのだろう。
「あなたは出ないのですか、春蘭」
いつもなら直ぐに起こす所であるが、まずは春蘭に話し掛けた。
真っ先に敵の制圧に向かっていてもおかしくない春蘭が此処で動いていない。それが少し異常に思えたのだ。
「稟か……そろそろ出る。風がお前の到着を待ってからだと言ったのでな」
「風が? なるほど……秋斗殿の動きのせいですか」
「ああ。まったく、あのバカモノめ……私が追撃しても同じだろうに……」
愚痴を零す春蘭に対して、稟はやはり……と一言。
秋斗の伝令を受けて予想したのは、彼が猪々子の捕縛を画策している事。保険として凪や明を連れて行ったのも分かっているし、任せろと言うからには口出しはしない。
無茶を通して帰ってきたというのに相変わらず自分勝手な事をする。少しばかり腹立たしいが、一つの事柄に気付き、彼の思惑が読み取れていたから何も言わなかった。
「ふむ……風、起きてください」
「……ぐー」
「起きろっ!」
「おおっ」
さらに近付いて頭を叩けば、いつも通りに飛び起きる。眠たげにこしこしと目を擦り、半目で稟をじとっと見つめた。
「お日様の日差しが暖かすぎてついうとうととー」
「戦場で寝る奴がありますか!」
「天高く昇り始めた日輪の光を感じずにはいられなかったのですよー」
「それでも――――」
「あー、では
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