道化師が笑う終端
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しん……と静まり返った。兵士達が思い起こすのは此れまでのこと。
街では、彼女がバカのような高笑いを上げながら巡回する日々があった。
戦では、優雅に優美に、どっしりと自信満々で構える彼女を守ってきた。
悪逆非道の限りを尽くして賊徒の如き戦いをしてきたわけでは無い。此処に居るのは、何処の軍にも居る主の為の兵士達。
故に、彼と幾人かは麗羽の諦観が許せず、親衛隊長と幾人かは麗羽の心を慮っている。
自分を叱りつける声を初めて聞いた気がした。名前も知らない兵士にむき出しの叱咤を向けられるなど、麗羽としては初めての経験。
そも、彼女を叱るモノなどいやしない。暗く脅されたり、駆け引きがあったりと、真っ直ぐに怒るなど誰もしなかった。猪々子や斗詩でさえ、彼女には何も言わなかったのだから。
ありがたい……と麗羽は思う。励ましてくれているとも取れるから、彼女の心は少し震えた。
しかして……彼女は正確に理解している。もう袁家は終わりだ、と。それを説明する事さえ、想いを向けてくれるならしたくなかった。
――なら、わたくしはどうしますの?
自問を投げれば、自答が脳髄に浮かんだ。
ふ……と麗羽は小さな微笑みを零した。次に鼻を鳴らして、兵士を嘲笑った。
兵士の優しさを受け止めて、彼女は仮面を被りなおし、不敵な笑みが甦る。
「あらぁ……このわたくしにそんな口の利き方をするなんていい度胸ですわね。あなた……このモノの頸を刎ねなさいな」
親衛隊長に命じる声は普段通りの麗しさで。
兵士達は信じられないようなモノを見る目を浮かべ、呆気に取られる。
「なにをしていますの? わたくしは頸を刎ねろと言いましたわ。早くおやりなさい」
「それは……」
「出来ない? ではそっちのあなたが頸を刎ねなさい」
「い、いえ……俺は……」
「わたくしの命令が聞けない、と?」
目を細めて見下す麗羽の瞳は冷たく輝く。威圧を含んだその空気に、兵士達は圧された。
「そう、あなた方は全員わたくしの命令に従わない……なら袁家の、わたくしの敵ですわ。ほら、あなたの敵が現れましてよ? 殺しなさいな」
今度は先ほど怒りを向けた兵士に言い放った。
ぐ、と言葉に詰まった兵士は、何も言い返せない。
なんたる無様、とわざとらしく呟いた麗羽は大仰に手を巻いて、いつも通り優雅に手の甲を口元に持って行く。
「ふふ……忠義はどちらにありますの? あなた方は誰に従っていますの?」
「え、袁紹様に――――」
「このわたくし! 華麗なる袁・本・初に従っているというのなら、指先一つの命令まで全てをお聞きなさいな。出来なかった時点であなた方は袁家では無いですわねぇ」
彼女は一寸、目を伏して自分を叱咤する。
――わたくしは
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