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乱世の確率事象改変
道化師が笑う終端
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が周りにバレてしまったら……考えるだけでも恐ろしい。
 そして未だ付き従ってくれる兵士達は彼女の親衛隊だが、寄り掛かるしか出来ない彼女の側にずっと居てくれるかと言えば……否。
 無一文でこれから表にさえ上がれないモノに付き従う人間など、よほどのお人よしか親愛を育んで来たモノではなかろうか。
 麗羽が袁紹であればこそ、彼らは親衛隊として成り得るのだ。名を捨てて民になるのなら、彼らの存在意義は無いに等しい。
 忠義を持ってくれているとしても、彼らを巻き込む事をしたくない……というのも一つ。
 どれだけ考えても、どれだけ悩んでも自分が生きている姿が思い浮かばない。
 それでも生きろと向けられた願いを無碍に出来ず、彼女は逃げる事を辞めなかった。

 そうして街道を駆ける事幾分幾刻。林の中から笛の音が高らかに鳴り響いた。

「な……おい、まさか……」
「嘘だろ……? なんで黒麒麟の嘶きがこんなとこで……」

 どよめく兵士達の声は焦りに彩られ、駆けていた馬がピタリと止まる。上司である猪々子の命令は彼女を生き延びさせろである為に、警戒するのは当然であった。
 笛の音がまた一つ。今度は遠くから聴こえた。まるで……先程の笛の音に応え合わせるかのように。
 兵士達は焦燥からどよめき、厳しい面持ちに変わって行く。

「まずいんじゃねぇのか?」
「ああ、こりゃあ……速く抜けちまう方がいい」
「袁紹様、如何致しますか?」

 考えた末に彼女に問いかける親衛隊の隊長。麗羽は彼の名前さえ知らない。
 頭がそう悪くは無く、敵がどれだけの化け物かも麗羽は知っている。彼女が真名を交換した仲である華琳の考えは読めないが、自分を捕える為に準備を怠らない事くらいは分かっていた。
 故に何も言えない。もう、逃げ場などないのだろう……そう麗羽は思う。
 諦観に支配された昏い眼差しを覗き込んで、親衛隊長は悲痛に眉を寄せた。

「袁紹様……」
「ちっ……あんた……何諦めてんだ……」

 一人の兵士が舌打ちと共に麗羽を睨みつける。
 つい、とそちらに視線をやるも、麗羽は何も言わなかった。

「おい、やめろ」
「いいや、やめないね。俺らは戦ったぞ。命を賭けて戦ったんだ。そんであんたを逃がす為に此れから戦うんだ。なのになんで……諦めてんだよ!」

 言い分は正論で、兵士が感じる普通の事。
 逃がそうとしている本人が逃げる事を諦めてしまうなら、自分達が戦う意味は何処にある、と。

「やめろっつってんだろうが!」
「袁家は!」

 止められても、兵士が大きく遮った。

「俺が戦ってる袁家は、袁紹様の元でないと意味が無いんだよ! だから逃がす! だから生かす! だから殺させねぇ! なのにあんたが諦めてたら……意味ねぇだろ!?」


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