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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
異聞 第四次ティアマト会戦(その7)
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るわけではないが私は貴族達の間では爵位も持たぬ貴族と蔑まれている。その私を旗頭として仰ぐ? そんな事が可能だろうか?」

俺の問いにフレーゲル男爵が笑い出した。
「有り得ぬ事ではあるまい。卿は陛下の覚えめでたくこれからも出世する事は間違いない。そしてグリューネワルト伯爵夫人の事もある。腹を括れば卿ほど一門の当主に相応しい人物は有るまい、違うか?」
「……」

俺が返事を出来ずにいるとフレーゲル男爵が楽しそうに言葉を続けた。
「カストロプ公が何処まで考えたかは知らぬ。しかし卿がヴァレンシュタイン少佐を配下に加えたことを危険視したのは間違いないだろう」
「……」

「カストロプ公の狙いは二つだ。一つは出来ればヴァレンシュタイン少佐を戦死させ卿とルーゲ伯爵達の繋がりを断ちたい。もう一つは卿を敗北させる事で卿の勢力を押さえたいということだろう、そうなれば卿を利用しようして自分を排斥しようとする人間の企みを潰すことができるからな。どちらか一つが達成できれば自分は安泰だと思ったのだ」
「……」

「卿は軍人のため宮中にはあまり関わってこなかった。その所為で宮中の恐ろしさを知らん。宮中で恐ろしいのは孤立する事だ。どれほど能力が有ろうと孤立しては生き残る事は出来ん……。勉強になったであろう、卿は今度ローエングラム伯爵家を継承する、精々潰されぬように努力するのだな……」
そう言うとフレーゲル男爵は楽しそうに笑い声を上げた……。



宇宙暦 795年 9月22日     アイアース  ドワイト・グリーンヒル



私は今総旗艦アイアースの自室で日記を書いている。同盟軍はティアマト星系を抜け首都星ハイネセンへと向かっている最中だ。ティアマト星域の会戦で我々同盟軍は帝国軍の侵攻を食い止める事が出来た。しかし残念だが会戦の内容はお世辞にも勝ったと言える様なものではない。

酷い混戦で同盟軍は手酷い損害を受けた。これ以上の交戦は不可能と判断せざるを得ない状況にまで追い込まれたのだ。それでも帝国軍が撤退した事を考えれば同盟軍は祖国防衛の任務をかろうじて果たしたといえる。例えてみればこちらは十発近く殴られたが相手にも七発程度はお返しした、そんなところだろうか……。

これほどまでに損害が酷くなったのは混戦になった所為だ。そして何故混戦になったかと言えばあの通信の所為としか言いようがない。あの映像……、メガネ、ロリ、巨乳、ネコ耳、ツインテール、ミニスカ……、あれに気を取られなければ同盟軍の前を横行する帝国軍左翼部隊を攻撃、大きな損害を与える事が出来たはずだ。会戦も勝利に持って行けただろう。

しかし、あの通信の所為で我が軍は帝国軍左翼部隊が方向転換するのを見逃してしまった。そして最終的に会戦の帰趨を決定したのはあの帝国軍左翼部隊だった
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