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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
異聞 第四次ティアマト会戦(その7)
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しかしフレーゲル男爵の考えはビッテンフェルト、ヴァレンシュタイン両名の考えと一致する。俺を快く思っていないミュッケンベルガー元帥にとっては受けやすかった誘いでは有るだろう。俺を叩く事で自分の権威を改めて確立し、エーレンベルク、シュタインホフ両元帥に対して貸しを作る事が出来る。

エーレンベルク、シュタインホフ、二人とも俺を快くは思っていない。ミュッケンベルガー元帥が俺を叩いてもどちらからも苦情は出ない筈だ、むしろ良くやったと陰で称賛されるだろう……。表では必要な犠牲だったと顔を顰めるに違いない。

「それにカストロプ公は卿にも利益が有る、そう見たのだ」
「どんな利益が有ると?」
思わず胡散臭そうな声になった。フレーゲル男爵が苦笑しキルヒアイスに視線を向けた。俺もキルヒアイスに視線を向けた。キルヒアイスが困った様な表情をしてフレーゲル男爵を見ている。何故だ、キルヒアイス。何故そんな顔をする。

「年末には卿はローエングラム伯爵家を継ぐ。伯爵家は名門、血縁関係や利害関係からローエングラム伯爵家を一門の当主と見る人間も多い。主だったところではアレンシュタイン伯爵、ザルツギッター子爵、ゲーラ子爵、ミュルハイム男爵といったところだが彼らが卿を一門の当主として認めるかな?」
「当然だが認めんだろう」
またその話か、嫌な奴だ……。

「その通りだな、まず認めまい。卿のローエングラム伯爵家の継承さえ納得はしておらん。陛下の御意向という事で口を閉じて黙っているだけだ」
「……それがどうした」

「しかしルーゲ伯、マリーンドルフ伯爵、ヴェストパーレ男爵夫人、ヴァルデック男爵、コルヴィッツ子爵、ハイルマン子爵……、彼らが卿を受け入れればどうだろう。卿を旗頭に仰ぐようになれば、そして卿が軍内部でしっかりとした地位を得れば……」
「……」

そんな事は考えもしなかった……。
「アレンシュタイン伯爵達も卿を一門の当主として認めざるを得ないだろう。新たなローエングラム伯爵は過去のどの時代の当主よりも大きな勢力を持つ事になる」
「……」

「当然卿はルーゲ伯達に感謝する事になる。そしてその代償はカストロプ公の排斥、そんなところだな。権力の座から滑り落ちればカストロプ公などあっという間に没落するだろう」
フレーゲル男爵が事も無げに言い放つ。確かに男爵の言う通りではある、しかし……。

俺の顔は強張っているだろう。これまで宮中で勢力を伸ばすことなど考えたこともなかった。ローエングラム伯爵家を継ぐこともミューゼルの性を捨てられる、その事が嬉しかっただけだった。周囲が反発するだろうとは思ったが、まさかそんな事を考える人物が現れるとは……。

「カストロプ公はそんな事を考えていたのか……。しかし、ルーゲ伯達が私を担ぐ事など有るだろうか? 卑下す
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