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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
異聞 第四次ティアマト会戦(その7)
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、この件に関わるな。抗議する私に伯父上が言ったよ、お前が知る必要は無い……」
「馬鹿な……」
「事実だ、嘘は吐いていない」
フレーゲル男爵がまた笑い声を上げた。

違う、さっきの笑いも今の笑いも優越感、あるいは俺を嘲る笑いでは無い。自らを嘲笑う自嘲だ! キルヒアイスも青い眼を大きく見開いて驚いている。それにしてもブラウンシュバイク公がフレーゲル男爵に関与を禁じた……。つまり九年前の事件の真犯人はカストロプ公という事か。……それにしても一体何が隠されているのか……。

「闇だな、帝国の闇だ。その闇は九年前から、いやそれ以前から存在し蠢いている」
笑うのを止めたフレーゲル男爵が呟いた、そしてグラスをじっと見詰めたかと思うと一口水を飲んだ。何処か遣る瀬無い様な響きと仕草だ。彼にとっては自分の限界を思い知らされた様な気がするのかもしれない。おそらく心の中には強い屈辱が溢れているのだろう。嫌な奴だが笑う気にはなれない。自分の無力さがどれほど腹立たしいかは俺も良く知っている。

「ラインハルト様、ヴァルデック男爵達がヴァレンシュタイン少佐の転属に力を貸したという事は男爵達は事件の真相を知ったということでしょうか?」
「そうだろうな、ルーゲ伯爵か、マリーンドルフ伯爵、或いはヴェストパーレ男爵が話したのだろう」
「では少佐もそれを知っているとお考えですか?」
「さて、どうかな」

ヴェストパーレ男爵は少佐にヴァルデック男爵達が犯人では無いと話した可能性は多分に有るだろう。しかしカストロプ公が犯人だと話しただろうか……。相手は政府閣僚だ。下手に教えては危険だと思ったかもしれない。おそらくは少佐には話さなかったのではないだろうか……。そして闇、一体何なのか……。

いや、それより考えなければならない事が有る。
「フレーゲル男爵、九年前の事件の首謀者はカストロプ公だったかもしれない。しかし今回の件、カストロプ公が絡んでいると言えるのだろうか? どうも腑に落ちないのだが……」
「……」

「カストロプ公が私を排除しようとした、つまり公は私がルーゲ伯達と繋がったと見たのだろうが、何故だ? 私にとって彼らと繋がる事にどれほどの利益が有る? ヴァレンシュタイン少佐を部下にしたからか? それだけで私を排除しようとした? どうも腑に落ちん、卿もブラウンシュバイク公も何か勘違いをしているのではないか?」
「……」

俺が喋っている間、フレーゲル男爵は黙って俺を見ていた。そんな彼を見ているとどうにも歯切れの悪い、戸惑いがちな口調になった。確かに勘違いなどであのブラウンシュバイク公がフレーゲル男爵に俺を助けろなどというはずが無い。そしてフレーゲル男爵も俺を救おうとするはずが無い……。

「分からんか……、まあ無理もない」
「……」
「カストロ
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