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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
異聞 第四次ティアマト会戦(その7)
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帝国暦 486年 9月22日   イゼルローン要塞  ラインハルト・フォン・ミューゼル



フレーゲル男爵が笑っている。嘲笑と言って良いだろう、だが目だけは笑っていなかった。試す様な目で俺を見ている。
「馬鹿な、俺、いや私は彼らと繋がりなど……」
フレーゲル男爵の笑い声がますます大きくなった。

「卿がどう思うかではない、カストロプ公がどう思ったかだ」
「……だからと言って、……第一、卿の言う事が真実だと言う証拠が何処にある。カストロプ公があの事件の真犯人だなどと……」
良く出来た推論だ、しかしあくまでフレーゲル男爵の推論でしかない。事件は迷宮入りしている……。

「先程言ったな、キュンメル男爵家に仕えていた人間に話しを聞いたと」
「……」
「その男はこう言った、あの事件はカストロプ公が引き起こしたのだと、狙いはキュンメル男爵家だと……。その男の言葉によればルーゲ司法尚書が動かなければキュンメル男爵家は存続が危なかったそうだ」
「……」

キュンメル男爵家を辞めた人間の言葉、何処まで信じられるのか……。俺の内心を読み取ったのか、フレーゲル男爵がニヤリと笑った。見透かされているようで面白くない。テーブルの上のグラスを取り一口水を飲んだ。キルヒアイスも水を飲む。俺が飲むのを待っていたのかもしれない。

「ルーゲ伯が司法尚書に就任していた時代、彼には政敵と言って良い人物がいた、分かるか?」
「……話の流れからするとカストロプ公か」
フレーゲル男爵が頷いた。そして皮肉に溢れた口調で言葉を続ける。
「彼の汚職とそれを逃れる様を評して“見事な奇術”、そう皮肉ったそうだ。大変な褒め言葉だな」
「……」

「私はこう考えている。キュンメル男爵家の顧問弁護士を依頼されたコンラートは引き受けるべきか否かをルーゲ伯爵に相談したのではないかと……、カストロプ公の汚職を苦々しく思っていたルーゲ伯は積極的に引き受ける事を勧めた。もちろん自分が応援すると約束してだが……」

なるほどと思いキルヒアイスに視線を向けると
「私もフレーゲル男爵閣下と同意見です。それが有ったからルーゲ伯爵はヴァレンシュタイン少佐に強く関わるのでしょう。おそらくは両親を死なせてしまった事への贖罪なのだと思います」
と言ってキルヒアイスはフレーゲル男爵に視線を向けた。フレーゲル男爵もキルヒアイスに対して満足そうな表情をしている。

面白くない、キルヒアイスとフレーゲル男爵が妙に意思の疎通が良い。何でだ? キルヒアイス、お前は俺の親友だろう? それとも違うのか? お前は俺の何なんだ? 親友だよな? 後でちゃんと聞かなくては……。

でももし違うと言われたら……。しょうが無くて付いてきてるとか言われたら……。馬鹿な! そんなことあるわけな
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