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Bistro sin〜秘密の食堂へいらっしゃいませ〜
食堂の食卓.4
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.4
22時過ぎの食卓の時間。この時間で従業員は一日の疲れを憩う。
食事をするだけではなく、新聞を読んだり、トランプをしたり、或いは明日の仕込みをする人もいる。
食卓の時間は、従業員が交流をする場でもある。
だからこそ、食事をして各々が好きなことをする。
時間は前後して一日前のこと。
この日はは木曜日。
定休から明けて、店の一週間はこの日から始まるとも言える。
その日も20組前後のお客様がご来店して、食卓の時間を迎えていた。
その日は、アントルメティエの太田の賄いが出た。
メニューはポトフ。それと、試作のバケット。皆が食卓を囲んで、口々に世間話をする。
ふと、東が口を開いた。
「賢太郎、そろそろお前も賄いづくりしてみろよ。メニューは何でもいいし、出されたものはみんな食う。アレルギーも無い。お前が作りたいものを作ってみろ。」
突拍子もなく投げかけられた言葉に、賢太郎は「は、はい。」と返事をした。
「よし、じゃあ早速明日よろしく!」
またしても、突拍子もなく投げかけられた。
賢太郎は驚いたが、有無を言わさず六郎が言った。
「おっ!賢太郎の賄いか〜、どんなもんを作るんだろう…楽しみだな〜。賢太郎は真面目だからな‥きっと…
うーん‥いや、もしかしたら…いや!こんなものだって‥」
六郎は妄想しながらよだれを垂らす勢いだ。今更断れるわけもなく、明日の賄いは賢太郎が作ることになった。
そしてその日、賢太郎は鍋の前に立っていた。開店前に仕込んでおいた賄いを、温めて鍋をかき混ぜる。
コトコトと音を立てる鍋。皆が閉店後の店で一息つきながら、トランプや読書にのめり込んでいる中、賢太郎の声が食卓の時間を告げた。
「皆さんおまたせしました!用意が出来ました。」
みんなが席に着く。いつもよりも机の上はシンプルに、料理の皿は一人一つ。
「うーん、いい香りだ。」「お!この匂いは…」「い、今の音は俺の腹の虫じゃないッスよ!」
皆が口々にする目の前の料理皿に盛られているのは、カレーライス。
それは、賢太郎が一番記憶に深い温かい味。母の味だ。
皆が一口食べてから、賢太郎も一口食べた。
平泉が一言。
「温かい。」
それは美味しいとか、そんな言葉よりもよっぽど賢太郎の心に響いた。
もちろん、平泉も温度ではなく味の話をしたのだろう。
みんな、それぞれの反応を示すが答えは満場一致のようだった。
少しずつ、賢太郎がこのBistroに馴染んでいるようだった。
Bistro sinに。罪の食堂に…
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