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渦巻く滄海 紅き空 【上】
八十二 闇からの誘い
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「――なにも全員行かせなくても良かったんじゃないですか?」

薄暗き室内。陰湿な空気が漂う中、部下からの問いに彼は口許を歪めた。
「あの子達皆、サスケ君に興味があるみたいでね…挙って名乗りを上げたのよ」

唇を舐める。蛇を思わせる切れ長の瞳を細め、大蛇丸は冷笑を浮かべた。

「……サスケ君を誘いにね…」









落陽に赤く沈む公園。

その片隅で、里外にて起きた出来事を一生懸命身振り手振りで語る少女を、二人の少年達が真面目な面持ちで聞いている。
どちらの少年も少女に好意を寄せているのは一目瞭然だが、当事者である彼女は鈍感なのか全く気がついていなかった。

幼少期の環境により、人に頼らず独りで生きてきた波風ナル。
故に人に頼る事が悪い事だと思い込んでいた彼女だが、以前ナルトやヒナタに『頼る事は甘えではない』と教わって以来、考えを改めた。

かつての彼女ならば自らの胸に納めたまま、決して打ち明けなかっただろう。
たとえ一人ではとても抱えきれないほどの辛い経験も胸に秘めていただろう。
だからこそ、こうしてシカマルとキバに相談染みた話を語る事が出来たのはナルなりの成長だと言える。


「話、聞いてくれてありがとだってばよ!!」
話した事で若干気が晴れたのか、聊かすっきりした顔立ちでナルがにかっと笑う。
気が晴れたらしい彼女にホッとして、「そりゃよかった」とシカマルは笑みを返した。

「つーか一人で抱え込むなよ。そっちのほうがメンドクセーっての」
「俺の台詞、勝手に盗るんじゃねぇよ。キバ」
重苦しい話題の話だった為に、キバの明るさがありがたい。からかうキバの意図に気づいて、シカマルがツッコミを入れた。
いくら恋のライバルであったとしても、今はナルの相談に乗る事が先決だ、と二人は水面下で手を組んだのである。

そんな事など露とも知らないナルは、腰掛けていたブランコをキィ…と揺らした。俯く。
地面に影を落とす彼女を、キバとシカマルは気遣わしげに見下ろした。

「……オレってば、アマルのこと何も知らなかった…。それなのに友達とか、ちゃんちゃらおかしいってばよ」
「…そりゃ会って間も無いのに、相手の考えなんか解るわけねぇだろ」
寸前とは一転して沈痛な面持ちのナルに、シカマルはわざと呆れた声を上げた。

「大体、そいつが大蛇丸の許に行ったのもお前のせいじゃないだろ。そいつが自分で決めたんだ。ナルが負い目を感じる必要なんざねぇよ」
落ち込むナルをシカマルが励ます。それまで暫し沈黙を貫いていたキバが「あ―――もう!!」と突然雄叫びを上げた。

「らしくねぇーぞ、ナル!!いつものお前なら『手足を折ってでも連れ帰る』って言うだろーが!」
「…いや、そこまで…――言う、かな?」と
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