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Bistro sin〜秘密の食堂へいらっしゃいませ〜
食堂の食卓.3

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.3
 東の言った通り、休みを挟んだ木曜日、来客は増えていた。
次の日も、また次の日も、来客数は増えていった。
日曜日には30組以上のお客様が、店を訪れた。
しかし、平泉の仕事は相も変わらず無駄のない迅速で正確な動きだ。
賢太郎は、息を呑んで見ていた。見るというより、流れるような動きに魅了されていた。
その日も無事、店の経営が終わった。
どうやら、日曜日を山場に来客数は増えて、その後は嵐の後のように静かになる。
ある程度の流れがあることに気づいた。

 賢太郎が、ウェイター修行で平泉を見続けてちょうど一週間の火曜日、平泉は賢太郎に言った。

「賢太郎くん、君の観察も早一週間が経ったわけですが、そろそろウェイターとして『見る』ではなく
『動く』ことをしてみませんか?」
平泉はそう言うと、賢太郎が初めて店にやってきた時のベストを改めて賢太郎にあてがってみた。
いよいよ、賢太郎がウェイター(見習い)として働く日がやってきた。
程々の緊張感と、ほんの少しの好奇心が賢太郎の中に湧いていた。
平泉は、「私もサポートしますから。」と言ってくれていたので、大船に乗ったつもりではいた。
店の扉の鐘がカランカランと小気味良く鳴って若いカップルが入ってきた。


「いらっしゃいませ。」
賢太郎は、平泉の見様見真似でグラスに水をくみ本日のオススメを告げた。
さぁ、後はお客様の様子をうかがうだけだ。
賢太郎がそう思っていると、平泉が耳打ちをした。
「賢太郎くん、そうお客様をジロジロ眺めては落ち着いていただけないですよ。ウェイターは店の顔、お客様に見られる店の雰囲気そのものなのです。」
平泉の言葉に耳を取られて感心していると、ポンっと平泉が賢太郎の背中を押した。
「さぁ、お客様のもとに行ってください。」
カンタンだとは思っていなかったが、想像していた以上に大変なのだとものの数分で知らしめられた。
オーダーを厨房へと告げた。幸いにも、難しい注文もなく単品のステーキとライスだった。
ナイフセットを用意して、厨房で料理が出来上がり、賢太郎は料理を運ぶ。
テーブルに置くときに、平泉の咳払いが聞こえた。
賢太郎は平泉の方へ目をやったが、目が合うといつもの調子でニコリと笑った。
配膳を終えて平泉のもとへ戻ると、平泉が更に耳打ちをした。
「賢太郎くん、料理の配膳はお客様の左から、お酒は右、食器を下げるのも右です。」
その後も、平泉の指導のもと賢太郎はウェイター業に励んだ。
その日は、十数組のお客様が見えた。まだまだ、一流までの道のりは長い。
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