第十四章 水都市の聖女
第七話 戦いの始まり
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背後を振り返りルイズたちに頷いて見せた。
「……ま、期待しないでおくわ」
「無理しない程度にしておきなさいよ。学院に残してきたモンモランシーが泣くわよ」
ギーシュたちの目の奥に見えた硬く強い意志に、ルイズとキュルケは悲しみの色を混ぜた苦笑を返す。キュルケの返答にそれぞれ思うところのあるギーシュやマリコルヌは、頭を掻きながらそっぽを向き。思い相手が浮かばないレイナールとギムリは互いに視線を交わし合い同時に肩を竦めてみせた。
「―――あ、あれじゃない“虎街道”の入口って」
暫らく無言のまま進んでいると、森の向こうに切り立った巨大な峡谷が姿を現した。ロマリアとガリアを繋ぐ火竜山脈を貫く細い道―――虎街道である。十数キロに渡りロマリアまで続くこの街道は、数千年前にメイジの魔法により作られたと伝えられていた。左右を切り立った崖に挟まれた幅数十メートルのこの街道は、ロマリア東部から唯一ガリアへと繋がる道であり、常に行き交う旅人や商人の姿が見られる場所であったが、ガリアとの戦争が始まった今では、虎街道の入り口に展開しているロマリアの軍の者の姿しかなかった。戦闘の跡が見られないことから、どうやら敵勢力は未だ峡谷の中にいるようであった。入口を封鎖するように展開していた軍勢に向かって進んでいくと、一人の騎士が駆け寄ってきた。指揮官の所在を呼びかけながら駆け寄る騎士の姿に、ルイズが前に進み出た。
「わたしです。聖下より敵勢力殲滅の命を受けたルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールです。そちらに指令が来ていると思いますが―――」
「では、あなたが“アクイレイアの聖女”殿ですか。指令は承っております。あなたの命令に従えと」
ルイズに敬礼する騎士に頷くと、ルイズは虎街道の入口に視線を向けた。
「戦況はどうなっていますか?」
「敵勢力は全長二十五メイル程の甲冑を来たゴーレムです。数は今現在把握しているだけでも最低十体。厄介な事に防御力、攻撃力、更に速度までもが桁違いであり、先行したティボーリ混成部隊は全滅、先程偵察に向かわせた斥候部隊も―――」
騎士が言い切るよりも早く“虎街道”の入口の近くから爆発音と爆煙が立ち込めた。
「……どうやら全滅したようです」
「分かりました。それでは後を引き継ぎます」
目を伏せたルイズが馬を歩かせると、背後のギーシュたち護衛部隊も進み始めた。
ルイズたちのために包囲を左右に割って出来た入口までの道を通っていると、ロマリアの将兵から口々に応援の声が上がる。何時もならば調子に乗って馬鹿な行動を取るギーシュたちも、これからの激戦を考えているのか、硬い表情のままであった。その代わりカルロ率いるアリエステ修道会付き聖堂騎士隊と民兵の連隊の面々は胸を張り得意気な顔で進んでい
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