第十四章 水都市の聖女
第七話 戦いの始まり
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っている。
そしてその事をギーシュたちは正確に理解していた。
自分たちはまだ隊長と副隊長におんぶにだっこである、と。
そう、ギーシュたちは日々の地獄のような訓練により、自分たちの実力を正確に把握していた。英雄や勇者と呼ばれるような士郎やセイバー等の人物とは違い、自分たちは凡人に過ぎないと。だからと言ってギーシュたちは別に自分たちの事を卑下しているわけではない。と、言うよりもそんな事すらさせてもらうような余裕も暇もなかった。日々の訓練では気絶は当たり前。骨折、脱臼、打ち身、捻挫は毎日の如く。その度に水魔法により治療し直ぐに訓練へ参加。日々身体と精神を虐め抜く日々。そのお陰か、まだ一年も経っていないにも関わらず、ギーシュたちは、既に身体能力にのみに限り現職の軍人のソレを軽く凌駕していた。
「ま、ままずは、い、生き残らないと」
「落ち着けよマリコルヌ。焦らず慎重にやればいい。何時もの訓練だと思え。ほら、前に副隊長との模擬戦が終わってから隊長が言ってたじゃないか。竜に乗った副隊長から追いかけられて殺されかけた時ぼくたちに『戦場の方がましだな』って」
「……あれって本気だったのかな」
「まあ、目がマジだったからね」
「た、確かにあ、アレは酷かった」
“最後の晩餐事件”と呼ばれるセイバーのとっておきのオヤツを、士郎を含む水精霊騎士隊が誤って食べてしまった事から行われた模擬戦を思い返し、馬による揺れとは違う揺れで身体を震わせていたマリコルヌの肩を、馬を寄せたギムリが叩きながら笑う。肩を叩くギムリもマリコルヌと同じく震えていたが。
「ま……焦らずに落ち着いていこう。隊長も言ってただろ。戦場では冷静さを失ったものから死ぬって」
「“聖戦”って聞いただけでも冷静じゃいられないよ」
「……エルフと戦うかもしれないってのは覚悟してたんだけど、確かに“聖戦”は流石に想像の外にあったね」
「だからってあまり弱気にならないでよ」
「一応は頼りにさせてもらってるんだからね」
マリコルヌとギーシュが顔を見合わせ同時に溜め息を吐くと、ルイズとキュルケが会話に割り込んできた。ギーシュたちの後ろには、ルイズとキュルケは並んで馬を歩かせ、その後ろを本を読みながら馬に跨ったタバサが揺られている。そこにタバサの使い魔であるシルフィードの姿はない。航空戦力として徴集されたセイバーを見たタバサが、シルフィードを人間形態に変えてアクイレイアに置いてきたのである。
「最悪君たちが逃げる時間は稼いで見せるから、そこのところだけは安心してくれ」
自分たちの力不足を自覚しているギーシュたちであっても、女を置いて逃げるよな真似だけは絶対に出来ない。それは貴族としての矜持の前に男としての言葉であった。ギーシュの言葉にマリコルヌたちも
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