第十四章 水都市の聖女
第七話 戦いの始まり
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いっと身体を前に出した。
「ブリミルと会う夢―――と言ったら笑うか」
「他の人が言うなら笑いますね」
ジュリオはニッコリと笑いながら顔を横に振った。士郎は口の端を微かに曲げると、ふっと、小さく息を吐く。
「夢にしては妙に生々しくてな。まるで本当にそこにいるかのようで……痛みや息苦しさ―――目が覚めた今でも夢とは思えないぐらいにはな」
「それは確かにおかしな夢ですね。それで、その夢で会ったという始祖ブリミルはどうでした?」
前に倒していた身体の背筋を伸ばし、ゆっくりとした動作で背もたれに背中を預けると、ジュリオは大きく足を組みその上に肘を置き顎に手を当てた。顎に当てた指が落ち着かないように細く動いている。落ち着いている様子を見せようとしているジュリオの姿を数秒確認した士郎は、小さく頷き口を開いた。
「俺が会った始祖ブリミルはまだ二十歳前後に見えたな。神々しさやら威厳なんてものも感じられない人のいい青年といったところだった。ああ、初代ガンダールヴにも会ったんだが、驚いた事にエルフでな。かなり気が強いようで、ブリミルも随分手を焼いている様子だったな」
「へえ、それは確かに変な夢ですね」
「ああ、他にもエルフたちが“悪魔”と呼ぶ奴とも会ったな」
「―――ッ!?」
ビクリとジュリオの肩が揺れた。士郎はそれに気付かない振りをしながら「ああ、そういえば」と改めてジュリオを見る。
「そろそろ教えて欲しいんだが、今は何時で、ここは何処なのかを聞いてもいいか」
「え、ええ。あれから随分時間が経っていまして、教皇聖下の創立三周年記念式典も半ばが過ぎていますね」
「そうか、つまりお前がここにいるという事は、ここはアクイレイアということか」
「……良く分かりましたね」
目を細め窺うようにジュリオが士郎を見る。
「お前があの男から離れるとは思えん」
「……何だか随分と刺々しいですね」
「ハッ―――お前がそれを聞くか。自分たちがしたことを顧みれば分かるだろうが」
口元を歪ませながら士郎は鋭くジュリオを睨み付ける。ガタリと椅子が大きく揺れ、床が軋む音を立てた。椅子に座ったまま、ジュリオが身構える。
「それで、どうするつもりだ」
「どう、とは?」
「俺をここに閉じ込めておくのか、と聞いているんだが」
挑発するようにわざとらしく大げさに肩を竦めて見せると、ジュリオはニッコリと笑って。
「大人しく閉じ込められてくれますか?」
「断る」
「……ならぼく達にはどうすることも出来ませんよ」
一言で言い切られると、ジュリオは士郎の真似するかのように大袈裟に肩を竦めると顔を横に振った。
「なら、さっさとルイズたちの下へと帰らせてもらうか。随分と心配を掛けてし
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