第十四章 水都市の聖女
第七話 戦いの始まり
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はなし。胸に“リーヴスラシル”と思われるルーンも、怪我の一つすら見つからない。
「夢―――だったのか」
にしては、あまりにも真に迫っていた。
だが、状況から察するには夢か幻かにしか思われない。
では、一体なんなのか、士郎にはその答えが―――
「―――“虚無”」
可能性が高いのは一つ。自身の主が使う魔法。その能力の全容が未だハッキリとしないあの力ならば、可能性がないとは言えない。そして、それを使いそうな使い手にも心当たりはある。
「ジュリオ……ヴィットーリオ」
そもそも今自分がここにいる理由もそこだ。
あの奇妙な体験に、あの男が関わっていない方がおかしい。
「……取り敢えずは、状況の把握が先だな」
今は何時で、ここは何処で、何故自分はここにいるのか等、全くわからないのだ。
まずはここから出なければ、と士郎がベッドから降りると、まるでタイミングを見計らったかのように部屋の扉が開いた。
士郎は入ってきたものを取り押さえるかと考えたが、直ぐに自分は別に拘束されていた訳でもないことを思い出し、上げていた腰をベッドへと下ろした。ギシリと木製のベッドが安っぽい音を立てて軋む。そのまま直ぐに動けるよう浅く座った姿勢で、部屋に入ってくる者を待つ。
「―――おや、目が覚めたんですね」
「ジュリオか」
ベッドに腰を下ろす士郎に気付き、僅かに目元をピクリと動かしたジュリオは、そのまま何も気負う様子もなく部屋に入ってくる。軽く微笑みながら士郎に挨拶をしたジュリオは、部屋に置かれたベッド以外の家具である椅子に腰掛けた。
「気分はどうですか?」
「さて、どう答えればいいか……そうだな、複雑だ、といっておこうか」
「複雑、ですか?」
返って来た答えが予想と外れていたのか、戸惑いを見せるジュリオを、士郎はジロリと睨みつけた。
「全く状況が把握できていないんでな。怒ればいいのか笑えばいいのかそれさえわからないんだが―――さて、どちらの反応が期待に添えるのか」
「ふ、ふふ―――本当にあなたは冷静何ですね。まあ、こちらとしても冷静に話し合えればそれにこしたことはありませんからその態度は歓迎しますが……」
チラリとジュリオの視線が士郎の左手に向けられる。
「……何か、ぼくに聞きたい事はありませんか」
「聞きたい事、か……聞きたいことが多すぎてな」
「そうですね。例えば―――何かおかしな夢を見た、とか」
士郎とジュリオの視線が交わり。互いに何かを探るように見つめ合うが、直ぐに視線を外した。
「おかしな、か。今のこの状況も大概おかしいとは思うが……そうだな。確かにおかしな夢を見た」
「……どんな夢か聞いても?」
椅子に腰掛けたままジュリオがず
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