暁 〜小説投稿サイト〜
闇物語
コヨミフェイル
015
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との隔たりは一瞬で詰められものではないし、詰めれば、それに気付いて反撃、もしくは回避するだろう――身体に絶大なる負荷を掛けて。
 なら、どうするかって?
 火憐に詰めてもらうのさ。
 どうってことはない。
 僕が、突き出した手の平、いや腕を変形させるだけでいいのだ。
 僕は突き出した腕を植物に変形させて、火憐に伸ばして、全身に絡ませた――と同時に有らん限りの力で引き寄せた。
 全く予想していなかった攻撃に火憐は簡単に、それこそ投網にかかった魚のように無抵抗に僕の方に引き寄せられた。
 そして、そんな無防備な火憐の肩を変形していない方の手で掴んで、引き寄せた首筋に刹那の間を置くことなく牙を立てた。
 それだけだった。
 今の僕にとって造作のない、たわいもないことである。
 変身能力もエナジードレインも今の僕、忍の吸血鬼化した主、もしくはキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードの眷属である今の僕にとっては御茶の子さいさいだった。
 ただ、この変身能力もエナジードレインも使うことになるとは思わなかった――況んや、妹に使うなどとは微塵も思っていなかった。
 突き立てた牙を通して、意思に関係なく、何か、きっと黄泉蛙の霊的エネルギーだろう、が身体に流れ込んでいるのがわかった。それは牙の中を冷たい水が流れて、身体中にいきわたるような吸血とは異なる未知なる感覚だった。
 その流れは牙を突き立てた瞬間は激しかったものの、その勢いはすぐに衰えを見せた。黄泉蛙の霊的エネルギーとともに存在力が底を尽きかけているようだ。
 そこでやっと肩に入っていた力が抜けた。
 長かった一日が終わった。これで皆を巻き込んだはちゃめちゃにめちゃくちゃだった事件は終わった、そう思った――だが、黒幕はまだ終わらせてはくれはしなかったようだった。
 牙を伝う霊的エネルギーが途切れ途切れとなって、終わりが見えてきたと思ったときだった。
 それは飛び込むようにして、入り込むようにして、僕の牙を通り、僕の身体に侵入した。身体の中で胎動のように腹部でしばらく動き回ると、溶け込むようにして消滅した――と入れ代わりに一度大きく脈が身体を打った。
 胸が締め付けられるように苦しくなり、それに呼応して呼吸も気道を押し潰されたように苦しくなり、身体も燃え上がるように熱くなった。
 が、一瞬で苦しさも熱さの煩わしさもすぐに消えた――わけではなく飢餓感に代わっていた。
 その飢餓感は今までに感じたことはないほど、底知れないほどのものだった。
 それを潤すためなら何の足しにもならない海水でも、ゴミ処理場の生ゴミでも――実の妹の血でも飲み干し、たいらげてしまいそうだった。
 そんな余りと言えば余りの身体の変調の目まぐるしさに意識が朦朧としてくるようだった。
 既に黄泉蛙の
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