第4部 誓約の水精霊
第3章 指輪
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陽光眩しいヴェストリの広場の端っこで、ウルキオラはシエスタと一緒にいた。
いつもの場所で、紅茶を楽しんでいる。
「急に呼び出して、どうしたんですか?」
シエスタは率直な疑問をぶつけた。
今までは、ウルキオラがこの場所で本を読んでいるのを見かねて、シエスタが自主的に紅茶を持ってきていた。
要するに、シエスタからのアプローチが多かった。
というより、それしかなかった。
しかし、ウルキオラに初めてここに来るように言われたので、シエスタは何事かと思ったのだ。
ウルキオラはカップを置くと、ポケットに手を突っ込んだ。
そして、緑色の宝石が埋め込められた三個の指輪を握り、それをシエスタに渡した。
「わ、私にですか?」
「マフラーのお礼だ」
シエスタは驚いた顔をした。
「気に召さないか?」
「い、いえ。すごく嬉しいですよ」
シエスタはとびっきりの笑顔を振りまいた。
「そうか」
それを見たウルキオラは、シエスタから目を逸らし、紅茶の入ったカップに手を伸ばした。
「でも…」
シエスタは自身の掌にのった三つの指輪を見て言った。
「三つもいりません。一つで十分ですよ」
そういって、二つの指輪をウルキオラに返した。
「そうか」
それを受け取る。
紅茶を飲みほして、席を立った。
「呼び出した用件は以上だ」
「ま、待ってください」
シエスタは身を乗り出して、ウルキオラの袖を掴んだ。
「なんだ?」
「あ、あの…ありがとうございます」
シエスタは顔を真っ赤にしながらお礼を言った。
「ああ」
ウルキオラはその場を去った。
ヴェストリの広場を歩いていると、二人の影がウルキオラの前に立った。
ギーシュとふとっちょのマリコルヌである。
珍しい取り合わせである。
二人はじっとウルキオラとシエスタのやり取りを覗いていたのだ。
「やや、まさか君が女の子に贈り物とはね」
「ギーシュ」
ウルキオラは立ち止まり、ギーシュを見つめた。
まあ、相も変わらず気障ったらしさが全身からにじみ出ている。
視線を隣に移す。
頭の片隅に、そいつの記憶が残っていた。
「かぜっぴきのマリモンヌだったか?」
「誰それ!僕はマリコルヌだよ!風上のマリコルヌ!てか、なんで変なあだ名は覚えてるのさ!」
マリコルヌは今にも泣きそうな声で言った。
よほど、ルイズのつけたかぜっぴきというあだ名が気に入っていないらしい。
「紛らわしい名だ」
「名前が紛らわしいなんて言われたのは初めてだよ!」
既にマリコルヌの精神的体力はゼロである。
おほん
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