第4部 誓約の水精霊
第3章 指輪
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おいおいおい、と廊下でギーシュが泣き崩れた。
「わかった。そんな風に言われては、僕はこの場で果てるしかない。愛する君に、そこまで嫌われたら、僕の生きる価値なんて、これっぽっちもないからね」
「勝手にすれば」
ギーシュみたいな男が、振られたぐらいで死ぬわけがない。
モンモランシーはつれない態度を崩さない。
「さて、ではここに……、せめて、君が暮らす部屋の扉に僕が生きた証を残すとしよう」
ガリガリガリと固い何かで扉をひっかく音が聞こえてくる。
「な、何するのよ!やめてよ!」
「愛に殉じた男、ギーシュ・ド・グラモン。永久の愛に破れ、ここに果てる……、と」
「と、じゃないわよ!もう!」
モンモランシーは扉を開けた。
ギーシュは満面の笑みを浮かべて立っていた。
「モンモランシー愛している。大好きだよ!愛してる!愛してる!」
そして、ぎゅっと自分を抱きしめてくる。
一瞬、モンモランシーはうっとりしてしまった。
ギーシュはとにかく「愛してる」を連呼してくる。
ポキャブラリーが貧相なせいなのだが、そのセリフを何度も言われると、悪気はしないのであった。
それからギーシュは、持っていた包みをモンモランシーに手渡した。
「……なにこれ?」
「開けて御覧。君へのプレゼントだよ」
モンモランシーは包みを解いた。
それは、例の指輪であった。
ウルキオラ経由で貰った指輪を、魔法を用いてモンモランシーの人差し指の太さに合わせたのである。
ギーシュは、仲良くなった女の子のあらゆるサイズを暗記しているのである。
「指輪?」
モンモランシーは眉をひそめた。
「嵌めて御覧?似合うはずだよ。君の清純さが何倍にも増幅されるから。ほら、はやく」
モンモランシーはしかたなく、その指輪を嵌めた。
よく見ると、綺麗な指輪である。
真ん中に嵌めこまれた緑色の宝石が、窓から差し込める月明かりに反射して、何とも言えぬ幻想的な雰囲気を醸し出していた。
それを見たギーシュの顔が、ぱぁっと輝いた。
「ああ、モンモランシー……、やっぱり君は清純だよ。僕の可愛いモンモランシー……」
呟きながら、ギーシュはキスをしようとした。
すっと、その唇をモンモランシーは遮る。
「モンモン…」
ギーシュは思わず、ウルキオラの発した名を呟いてしまった。
悲しげに顔が歪む。
「勘違いしないで。部屋の扉は開けたけど、こっちの扉は開けてないの。まだ、あなたとやり直すって決めたわけじゃないんだから。あと、誰がモンモンよ!」
ギーシュはもう、それだけで嬉しくなった。
脈があるのである。
「僕のモンモランシー!考えて
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