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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
追憶  〜 帝国歴487年(一) 〜
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だと思ったようだが……」
「思い通りにはいかぬか」
シュタインホフ元帥が渋い顔をした。

厄介な事だ。宇宙艦隊司令長官は軍の最高位では無い。序列では第三位、実戦部隊の最高責任者でしかない。言わば現場の最高責任者だ。だが野心の有る人間が就けば非常に危険なポストでも有る。帝国最大の武力集団、宇宙艦隊を自分の野心のために使うだろう。野心が大きければ大きい程危険度は増す。ミューゼルには任せられない。

シュタインホフ元帥が私をじっと見ていた。
「軍務尚書、適任者が居ないな」
「いや、もう一人いる」
「もう一人? それは?」
「……ヴァレンシュタイン少将」
「!」
シュタインホフ元帥が眼を見開き“本気か”と囁くように問い掛けてきた。

「ミュッケンベルガー元帥の意見だ。少将なら適任だろうと」
唸り声が聞こえた。シュタインホフ元帥が唸っている。私も聞いた時には唸っていたな。
「艦隊司令官としての実績は無いが?」
「確かに無い。だがオーディンをブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯の内乱から守った。それに今回の会戦、勝てたのは少将の力による。勝てる男というのがミュッケンベルガー元帥の評価だ」
「なるほど」
またシュタインホフ元帥が唸った。

「しかし階級が低い、それに平民であろう」
「そうだな、惜しい事だ」
階級も身分も、宇宙艦隊司令長官には届かない。
「軍務尚書、こうなると陛下がミュッケンベルガー元帥の辞任を保留扱いにした事を重く見なければなるまい」
「うむ、ミュッケンベルガー元帥を司令長官に留め置き副司令長官に戦場を任せる、そういう事だな」
「そういう事だ」

何の事は無い、ヴァレンシュタインの提案の通りか。思わず笑い声が出た。シュタインホフ元帥が訝しげな表情をしている。
「済まぬ、つい笑ってしまった」
「……」
「統帥本部総長、卿はヴァレンシュタイン少将がミュッケンベルガー元帥に手紙を書いた事は御存じかな」

「責任を取りたいという例の書状かな。軍から追放してくれと書いてあったと聞いているが」
「その書状には自分の追放後はミュッケンベルガー元帥にオーディンを守って欲しいと書いてあったそうだ」
シュタインホフ元帥が眼を瞠った、そして笑い出す、私も笑った。

「やれやれだな。こうなる事を予測済みか」
「そのようだ、少将の目にも今の帝国には司令長官に相応しい人物は居ないらしい」
「どうも可愛げが無いな、軍務尚書」
「ああ、可愛げが無い」
また二人で笑った。妙な事だ、私とシュタインホフが声を上げて笑っている。状況は決して良くないのだが。

「となると問題は副司令長官を誰にするかだが……」
「今後、遠征軍の規模は縮小する。副司令官はメルカッツ、グライフス、ゼークト、シュトックハウゼン、その
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