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渦巻く滄海 紅き空 【上】
八十一 復讐者
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もはやサスケはナルトを見ていなかった。わなわなと肩を震わせる。
唇をわななかせ、サスケはナルトを鋭く見据えた。その眼は明らかに殺意に満ちていた。
「………つまりてめえは……」

この瞬間、サスケはナルトを敵と判断した。

「……イタチを……兄さんを殺す為に……俺を利用したのか…ッ!?」
サスケの渾身の殺気が突き刺さる。けれどそれをナルトは柳に風と受け流した。
そうしてサスケより遥かに鋭く冷たい視線で、立ち上がろうとする彼を見下す。


「……人間ってのは愚かな生き物だな。一度気が緩めば、隙はいくらでも出来る。イタチの場合、お前と和解したおかげで希望を抱いてしまった。再び弟と共に過ごせる未来を、夢を見てしまった…―――」


ナルトは嗤った。それは酷く軽薄な冷みだった。

「―――馬鹿な奴だ」







瞬間、サスケの怒りが爆発する。堪え難い怒気は恐怖を打ち殺し、サスケの足を突き動かした。
「兄さんを…っ、イタチを愚弄するなぁアァあ――――――ッ!!!!」

もう残り僅かしかないチャクラを振り絞る。既に二度使った【千鳥】の発動。
この術を授けた畑カカシの言葉が脳裏に過る。無理に発動すれば死ぬ―――という忠告。

けれどもはやサスケは己の身がどうなろうとも知った事では無かった。腕を伸ばす。
バチバチと放電する雷をナルト目掛けて。


「……死に急ぐか…」
無理な術の発動を即座に見抜いたナルトが眼を細める。すぐさま庇おうとする白を視線で制して、彼は迫り来るサスケを悠然と眺めた。

「だが無駄だ」


ナルトがそう呟くや否や、掻き消える【千鳥】。
無残に腕から零れ散る雷をサスケは愕然で見つめていた。だが次の瞬間には天と地がくるりと反転する。
気づいた時にはまるで背に何か重いモノが圧し掛かっているかのように、彼はナルトの足下で突っ伏していた。

顔もろくに上げられない。眼までも満足に動かせず、口惜しげに唇を噛み締めるサスケの傍で、ナルトが膝をつく気配がした。

「兄の仇が討ちたくば、証明してみせろ」
耳元で囁かれた静かな声。その一言を最後に、サスケは意識を失った。




「―――俺を殺してな」











東の空が白ばむ。

鬱蒼とした『死の森』をほんのり照らす東雲の微光。西の空に残る月影に、鳥の声が朝を告げてゆく。
朝陽がサスケの視界を遮っていた暗幕を破く。意識を取り戻したサスケは大木の幹を背に独り、暁の空を仰いだ。

朝焼けの光がサスケの頬を撫でる。けれど彼の瞳はどんよりと薄暗く、それでいて強い光を灯していた。
「……うずまきナルト…」

項垂れたまま呟かれた宣言は鳥の鳴き声に掻き消される。その呟
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