四話「とも」
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んにそっくりね?」
「あ、はい……」
俺は、苦笑いした。
「……あなたの御兄さんは、この施設のために自分が重傷を負ってでも、ともちゃんのために必死になてあの校舎を建ててくれたの。あの子は、今もあの校舎で勉強をしているわ?もう小学生なんだし、そろそろ近くの学校へ行ってみるよう誘っているのに、この校舎じゃなきゃ嫌って言って聞かないの」
「……よっぽど、気に行っているんですね?」
俺は、その校舎に思い入れがあるようだと感じ、微笑んだ。そして、その校舎が気にかかる。
「あの……よろしければ、校舎をのぞいてもよろしいですか?」
「ええ、もちろんよ? ちょうど、ともちゃんも勉強を終えて帰ろうとしているころだし。来てくれたらとても喜ぶわよ?」
その俺の言葉に施設長は喜んで案内してくれた。
校舎は、田舎の学校としてはとても小さい建物で、教室は一室しかない。それでも自然に囲まれた風景がとても絵になり、幻想的で美しく見えた。そして、そんな教室の窓際から一人の少女がノートに黒板のを写し書きしていた。
「とも……!」
ふと、俺は少女の姿に懐かしい面影を感じ、彼女の名を口にした。
「……?」
ともは、背後の気配に気付いてふと振り返った。そこにはいつも会う施設長と、自分の義母となった女性、そして……
「ぱ、パパ……?」
既に他界した義父であるも、それでも目の前に現れた時は、彼の死など等に忘れ、血相を書きながら教室から飛び出してきた。
息を切らして、俺の元へ駆け寄る少女はそのいたいけな瞳で俺を見上げた。
「……」
俺も、どこかに感じる懐かしさを引き出して、少女を見た。
「ともちゃん? こちらは、朋也さんの御兄さんよ?」
「……」
やはり、父ではない。現実に戻った彼女は我に返ると、静かにお辞儀をした。
教室の席に座って、ともはシンと楽しげに会話をしていた。彼女自身も、最初は朋也の兄ということに抵抗を感じていたが、兄の面影と風格が、彼女に親近感を与えた。
「本当の親子のようだな……?」
智代は、シンと手をつないで歩くともを見て微笑ましい光景に感じた。
「そうね? あんなに笑ったともちゃんは久しぶりに見たわ……」
――この微笑ましい光景がずっと続いていたら
智代は、そう思った。もし朋也がシンとして蘇らず、あのまま生き続けていれば、きっととももあのように朋也に懐いて一緒に遊んでいただろう?
「智代!」
シンが、ともに手を引かれてこちらへ歩み寄ってきた。
「どうした?」
「ともが、俺と散歩したいっていうから、ちょっとそこまで一緒に歩いてくる」
「ともと?」
「ママ、いいでしょ?」
そうねだるともを見て、智代は不安を忘れて許可した。
「わかった。けど、あまり遠くへ行かないようにな?」
と、智代はそれだけ言うと、森の道へ入る二人を
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