第4部 誓約の水精霊
第2章 忠誠と敬意
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始めた。
街はお祭り騒ぎで華やかだし、楽しそうな見世物や、珍しい品々を取りそろえた屋台や露店が通りを埋めている。
地方領主の娘であるルイズは、こんな風に賑やかな街を歩いたことがない。
そして異性の袖を掴んで街を歩くなんてことも、したことがなかった。
その両方が、重かったルイズの心を軽くさせる。
「騒がしいな」
ウルキオラがそういうと、
「ほんとね」
とルイズもつい楽しそうに呟く。
「俺の世界の人間たちの祭りもこんな感じだ」
「そうなの?」
「ああ。こんな風に、派手な露店が並んでいた」
そういってウルキオラは、遠い目になった。
ルイズは、きゅっとそんなウルキオラの袖を強く握る。
なんだか、急にウルキオラがどこかに行ってしまうような、そんな気分になってしまったのだ。
いつか……、ウルキオラが帰る日はやってくるのだろうか?
ウルキオラは帰らなくてもいいと言っていたが、敬意を表する相手がいるのなら、少しは帰りたい気持ちがあるのかもしれない。
そういえば、やり残したことがあるって言ってたわね。
でも、こうやって並んで歩いているときぐらい、自分の方を見てほしいものだ。
ルイズはそう思った。
そして同時に、そんな風に思ってしまう自分に腹が立つ。
好きだから?
ち、違うもん。
なんていうか、そ、そう。
プライドの問題よね。
そう自分に言い聞かせた後、ルイズはあたりを見回す。
そして、わぁ、と叫んで立ち止まる。
ルイズが立ち止まったことで、ルイズに袖を掴まれているウルキオラは、前のめりになる。
「なんだ?」
ウルキオラが振り返る。
ルイズは宝石商に目をとめたらしい。
立てられたラシャの布に、指輪やネックレスなんかが並べられている。
「見たいのか?」
とウルキオラが尋ねる。
ルイズは頬を赤く染めて頷いた。
二人が近づくと、頭にターバンを巻いた商人が揉み手をした。
「おや、いらっしゃい」
並んだ宝石は、貴族が身に着けるにしては装飾がゴテゴテしていて、お世辞にも趣味がいいとは言えない代物だった。
ルイズはペンダントを手に取った。
貝殻を彫って作られた、真っ白なペンダントである。
周りには大きな宝石が沢山嵌めこまれている。
ルイズはそのキラキラ光るペンダントが気に入ってしまった。
「欲しいのか?」
ルイズは困ったように首を振った。
「お金がないもの」
「ここにある」
そういってウルキオラは、アンリエッタから貰った巾着袋をカウンターに乗せる。
「いくらだ?」
巾着袋を開けると、一円玉ほどの大きさの金貨が
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