暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
~恋慕と慈愛の声楽曲~
Bitter Day
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別のジャンルで料理が得意なことは有名だ。アスナが家庭的、またはプロのコック的な料理を得意としているなら、シゲクニはどちらかというと野外料理のようなどこででも賄え、しかも美味な料理を得意としている。

《料理》スキルを完全習得(フルコンプ)した身としては張り合いがあることこの上ないのだが、残念ながらゆっくり味わい比べるような機会に恵まれなかった。

「――――で、次にわたし……と?」

「はい、他に料理が上手そうな知り合いに心当たりがなかったもので」

「上手そうな人の中に、よりにもよって何でユウキが……」

激しく謎だった。

かぐわしい匂いを撒き散らしている鍋の中に入った、液体になったチョコを溶けた《アピス・バター》とともに白身の入ったボウルにブチ込む。そこに、あらかじめぬるま湯に当てて暖めておいた生クリームを投入する。

「はい、ホイッパー(これ)で混ぜてください。コツはゆっくり優しく」

「承りました」

カッシュカッシュ、と意外に手際良く回るホイッパーの柄頭。本当のところ、ゲームであるALOの料理は現実ほど複雑化されていないため、コツも何もスキル値が足りていれば例外なく成功するのだが、この場合そんなリアリズム溢れる考えは捨てるべきであろう。贈り物だと言うならなおさらだ。

ティロン、という軽い効果音とともにかき混ぜられた状態になった液体に、さらに卵黄を追加しつつ、アスナはふと思いついたことを口にした。

「それにしても、このチョコレートってどこで手に入るんですか?わたしALO(こっち)に正式にアバターを互換してからまだ少ししか経ってないですけど、それでもこんな上質なチョコなんて初めて見ましたよ」

買ったものとも考えにくい。

とくにこの時期、チョコレートの需要率はうなぎのぼりになるので、NPC店で売られている普通のチョコレート以外のプレイヤー間で売買される上質なものはかなりインフレを起こすことになる。このレベルになると、結構な一財産をはたくことになるかもしれない。

再びホイッパーを繰る紅の巫女は、その言葉にふむと頷くと口を開く。

「それは確か、火妖精(サラマンダー)領から帰る途中、《竜の谷》の付近で地面から湧き出ていたのです。珍しいと思ったので採取しましたが、なるほど。やはり上等なものでしたか」

アスナは思わずむせるところだった。

《竜の谷》というのは、確か世界樹の周りをぐるりと覆う環状山脈にいくつか用意されている、《虹の谷》や《蝶の谷》、《ルグルー回廊》といった通り道の一つだ。

しかし、自分が驚いたのはそこではない。

地面から湧き出るチョコレート。それは、まさか、バレンタイン限定地形イベントの――――

「ゆ、油田……チョコレート!?」

「ほう、
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