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フリージング 新訳
第14話 Tempest Turn 5
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そう、だったのだ。

「なっ??」

ふるった拳が空を切る。

その動きが、速度が、一気に加速したのである。
今までのものとは比ではない。
一瞬だったが、その一瞬。瞬間的に加速した。

「このッ??」

空を切った刃とは逆の拳を振り抜いたが、またしても外れる。

一陣の風が吹き抜け、背後を振り返るが、遅かった。

そこには、グラディウスを大きく振りかぶったカズトがいたのだ。

「お返し…だ??」

その刃がイングリットを襲い、ディバイントラストを交差させて防ぐが、防ぎきれずによろける。
そこに、カズトの回し蹴りが炸裂し、
ゴロゴロと転がっていく。

「きっさま…………」

ギロリとカズトを睨みつけるが、彼は意にも返さない。
ただ、ニヤリと笑みを浮かべるだけだ。

「何故、アクセルを使える……」

イングリットが口にする。その口調は、どこか忌々しげだ。

「おいおい、じゃあ逆に聞くぜ?」

グラディウスを握り直し、構える。

「いつから俺が、アクセルを使えないって錯覚していた?」

自信満々に言い切った。

「ほざくなよ。一年生。」
「喚くなよ。人間が小さく見えるぞ。」

その憎らしげな目つきが一層恐ろしいものになるが、すぐにそれは余裕の表情に変わる。

理由は特出したものではない。
ただ単に……

「イングリット先輩??」

パンドラの持つ最強の武器がやってきてしまっただけの話だ。

「レオ。さっそくで悪いが、イレインバーセットだ。」
「っ!はい!」

ゾクリと、カズトの背中を悪寒が支配した。これは、先日感じた感覚。そう。

フリージングの前兆だ。

「うっは……まじでヤバイかも……」

自嘲気味に、引きつったように笑う。
確かに、カズトはフリージングを自力で解くことができる。

だが、それができたのはカンナヅキのリミッターの質が、イングリットのリミッターに比べて、極端に低かったからだ。

ではどれくらいかと言えば、

カンナヅキのリミッターは3人がかりでサテライザーとカズトを止めた。
しかしそれは、3人がかりでやっと。のことである。

「フリージング!」

地面を伝って体が動かなくなりそうになるのを、アクセルを使って回避する。

「遅いぞ。一年生。」

イングリットが迫り来る。拳を防ぐが、その速度は先ほどの比ではない。

ーいや、俺が遅いんだ!

しかも、おそらくイングリットはアクセルを使っている。
それに引き換え、カズトにはフリージングによる負荷がかかってしまっているのだ。

これで追いつかれないわけがない。

「終わりだな。」

その時、イングリットの姿が“4人”に増えた
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