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フリージング 新訳
第14話 Tempest Turn 5
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動き出したのは、ほぼ同時だった。

「ゼァッ??」
「ハァッ!」

地面を滑空するように走り抜けたカズトは、下段からクラディウスを振り上げる。逆に、イングリットは上段からトンファーで殴りかかる。
空中で二つの金属がぶつかり、鍔迫り合いまで持ち込む。

ギリギリと火花を散らし、剣とトンファーがぶつかり合う。その速度はサテライザーと同じかそれ以上。
手数の多いトンファーを、カズトのグラディウスが、持ち前のパワーとサイズで弾いていく。
だが、攻めあぐねているのはイングリットの方。拮抗していたはずの戦闘は、いつの間にか、カズトが押される形になっていた。
じわじわと、トンファーの猛攻に耐え切れずに後退る。その顔には、焦りの色が浮かんでいた。

「くっそが??」

グラディウスを大振りではなく、小刻みに動かしながら、応戦するが、それでも足りない。

ドン。

そしてついに、壁際まで追い詰められた。後ろは学生寮。避けるに避けられない場所だ。それを見越したわけではないだろうが、カズトを相手とする場合、何かを盾に取るという行為は、最善の手だ。

だが、カズトにはまだ希望があった。
幸い、イングリットの得物は小ぶりなもの。つまり一撃のインパクトは少ないと考えたのだ。

ーこのまま、押し込む??

グラディウスでトンファーの一撃を防ぎ押し込もうとした時だ。
カズトは逆に、物凄い衝撃で壁にめり込み、貫通した。

ドゴォン????

その痛みに、カズトは思わず呻く。
ガネッサのボルトウェポンなど比ではない。グラディウスで防いだというのに、インパクトは軽減などされなかった。

いや、軽減されてこの威力なのだろう。
体内から熱いものが込み上げ、たまらず口から赤い液体を吐き出す。

グラディウスにはヒビが入っているが、そこは文明の利器。すぐに回復した。

「あんた、本当に人間かよ……」
「そう言う貴様も、本当に人間か?」

軽口をたたきながら、剣を構える。
だが、左手は一撃を受けた脇腹に当てられている。

気絶しそうになる意識を、血がにじむほど強く歯を食いしばることで保つ。

ギンっと、気合を入れ、もう一度走り出す。今度は直線的なものではなく、カンナヅキ戦で見せた不規則な動き。
速度で言えば、通常時のサテライザーよりもあるだろう。初見では捉えるのは難しい動きのはずなのだが、

「面白い動きをする……」

イングリットには見えている。
理由は簡単。先の戦闘で、カズトのこの動きをサテライザーが同じものをしていたからだ。

「サテライザーの真似事……いや、サテライザーが真似ているのか……」

動きだけならば、アクセル時のサテライザーより遅い。だから、捉えるのは簡単だった。

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