彼らの黒の想い方
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攻めたのも、徐州を攻めたのも自分達で……あまつさえ彼の部隊の大半を殺したのは自分なのに、この男は憎んでいないのかと……思考が乱される。
「話は終わりだ。後は……こいつで語り合おうか」
しかし楽しそうに笑う彼を見て、猪々子は渦巻く思考を切って捨てた。
「……お前ら、手出し無用だ!」
部下に指示を出してから、同じように子供のような笑みを浮かべ、彼女はズイと馬を進める。
「あんたバカだろ」
「お前もバカだな」
互いに嫌いじゃないなと思いながら、長剣と大剣が合わさる程の位置まで近付いて行った。
「……あたいは猪々子」
「……俺は秋斗だ」
幾瞬、切っ先を合わせ、真名を名乗り合い、存在を戦場に預け切った。
猪々子はこれまで生きてきた自分を賭けられるように。
秋斗は、たった一つ嘘ではないモノを賭けられるように。
大きく息を吸い込んだのも、剣を振りかぶったのも同時。
裂帛の気合を込めて吐き出される猪々子の声を合図に、やけに高い金属音が一度二度と場に響く。
そうして彼と彼女は、二人共が子供のような笑みを浮かべながら、互いの願いを賭けた戦いに身を投じて行った。
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