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【銀桜】4.スタンド温泉篇
第5話「旅行先ではだいたいケンカする」
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れは銀時にとって最も見馴れた顔ぶれだった。
【銀さん】
「お前ら!?」
 驚愕する銀時の前に浮遊するのはスタンド化した新八、神楽、お妙だったのだ。
【あんた相当慕われてんだね。並大抵の想いで生霊になれるもんじゃないよ】
 『生霊』。それは誰かに抱く相当な怨念か根強い想いがない限り、具現化しない幽霊(スタンド)
「……だな。俺こいつらに相当恨み買われてっから」
 不服そうな口ぶりの割に、彼はほくそ笑んでいた。
【そうネ。散々もらってない給料の恨みは深いアルヨ】
【いい加減払ってください】
【こんなオナラ臭い旅館はやく出て行きたいわ】
 それぞれが勝手なことばかりぼやく。
 TAGOSAKUに勝つためには、それに匹敵する最強のスタンドが必要だ。
 生霊となってそびえる三人。
 人の想いは時として奇跡を起こす力を持つ。強き想いによって生まれたスタンドは、同時にその想いに比例する強大なチカラを持つ。
「最強のスタンド……んなもん目の前にあらァ!」
 勝利を確信した笑みを浮かべ、銀時は拳を強く握りしめた。

*  *  *

 仙望郷の廊下。
 長年お岩に仕えていた男のスタンドは、慌ただしく廊下を浮遊していた。今この旅館は徳川家康公の湯治を明日に控えて、その準備に忙しい。
 ……はずだが他の従業員たちの姿が見当たらない。
 ただでさえ人手が足りないのに、と愚痴をこぼしながら探し回る。
 すると向こうの通路にこの前女将が雇ったばかりの新入りが歩いていた。魅力的な容姿と無愛想な態度がお客にウケて、はやくもこの仙 望郷のトップになりつつある若い女性だ。
【新入り。ちょうどよかった。手伝ってくれ】
 呼ばれて静かに歩みよってくる新入り。
 仕事の説明をしようと、スタンドが口を開こうとしたその時だった。

“グスッ”

 スタンドに実体はない。
 だが女の手は確実にスタンドの身体に突き刺さっていた。
「貴様のタマシイいただくぞ」

“ジュルリ”

 異様な音を轟かせ、スタンドは青白い火の玉となって女の掌中に収まる。
「いただきます」
 女は掌中の火の玉をゴクンと飲みこんだ。
 しばし口の中で歯ごたえを味わう。だが肝心の『味』はない。
 なのに女はどこか満足そうだった。
「さて残るはマダオのみ。あの男が鍵を握る、か……」

 そして女は薄暗い廊下をまた歩き続ける。

=つづく=?

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