第ニ話。富士蔵村の噂 前編
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俺の手を両手で握った。
(うっ、マズイ……ヒスる??)
「ごめんね。皆んなが怖がっているから、何もないよーって言えるように調べてくれるだけでいいの」
「うおっ、あ、はい」
先輩の温かい手が、俺の右手を握ってくる。
「モンジくん達が危ない目に遭うのは嫌なんだけど、頼りになる子がモンジくんしかいなくて……」
そして、先輩はあろうことか、俺の手を自分の胸元に寄せた!
「っっっ??」
胸に触れるか、触れないか、の位置……柔らかさを堪能出来るわけではないが、その布の先はいわゆる先輩の胸なわけで……。
「か、会長っ!」
「うにゅ?」
音央が赤くなって抗議し、そっちに先輩が体を向けた弾みで……。
むにゅ。
「っっっっっっっっっっっっ??」
(デ、デカイ?? やっぱり原子力空母級はある……って馬鹿!
何考えてんだ、俺は?? ま、マズイ……来た。ヤツがくる、ゾ)
______ドクンドクンドクドクドク。
また、なっちまった。
しかし、この感触は、凄まじい。
俺の右手は楽園に到達していた。
右手が触れた禁断の世界。そこは柔らかく、温かで、程良い弾力を持ちながら、制服越しにも伝わる心地よさをもっていて……。
女性の胸をあまり物に例えたくないが、戦艦に例えるなら、詩穂先輩、原子力空母級。音央、弩級戦艦。キリカ、戦艦。一之江、ゴムボ……。
ザクゥゥ??
「切り落とされた??」
あまりの激痛に左足が切断されたかと思ったほどだが、足はなんともなかった。
一之江はあくまで俺の右側にいる。
左足を鋭利な刃物で刺すには、かなりの高速移動が必要だ。
もしくは、あれだ。居合とか。
っていうか、あれか、一之江は胸の大きさとか気にしてるのか?
俺が痛い目に遭うのは、そういうタイミングだよな。
というか、何故解ったんだ。
一之江のロアには、相手の心を読む能力とかもあるのだろうか?
一之江なら何でもありそうで怖い。
「わっ、どうしたの?」
「ここにいると、どうやら俺の左足は殺されるみたいです」
「わっ、大変だねっ!」
先輩は大慌てで俺の手を離して、肩に触れてくれた。
「それじゃあ、行ってらっしゃいだね、モンジくん?」
「はい、一番怖いのは都市伝説よりも身近にある、というのがよくわかりましたよ」
「ふぇ、そうなの?」
そうなんです。
一之江は素知らぬ顔をし続けている。
音央はそんな俺達の様子に気がついたのか、苦笑いをしていた。
「本当に気をつけてね?」
「大丈夫ですよ」
「まあ、お任せください。少なくとも音央さんは無事に戻します」
俺が席を立つと、一之江も席を立ち上がった。
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