第ニ話。富士蔵村の噂 前編
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う、みたいなお話なの」
先輩は胸の前で指を合わせて、しょんぼりした顔をした。
俺は先輩の顔を見ようとして、ついつい視線がその胸元にいってしまった。
(うっ、で、デカイ……。おそらくメーヤ級の大きさだぞ。
軍艦で表すなら、原子力空母級のたわわな胸だ。弩級戦艦胸を持つ、音央を上回っているな)
そんな事を思ったその時だった。
突然、左足に激痛が走った。
「痛だっ??」
「どうしたのよ、いきなり変な声をあげて」
「いや、今、左足を踏まれたみたいな激痛が……」
やったとしたら、一之江だろうが……しかし一之江は俺の右側に座っている。
犯行は不可能だ。
「踏まれた?」
「……何でもない」
気のせい……だよな?
「つまり、俺達でその『神隠し』の調査をして欲しい、と。そういう事ですね?」
痛みに耐えながら先輩に尋ねると、音央が自分を指差し……。
「モンジとあたしでね。一之江さんも色々詳しいみたいだから、いてくれればそりゃ心強いけど。ちょっと今からワンダーパークに様子を見に行くって感じよ」
予想通り、音央は自分で行こうとしていたな。
まあ、勝手に行かれるよりか数倍マシだけどな。
「はあー、わかった。行って、何もなかった、だから安心だよ、っていうのを広めたいんだな?」
「そーいうこと。ここからワンダーパークまでちょっと距離があるから、途中でタクシーでも拾って行かないといけないけどね。日没と同時に何かあるっていう話だし」
タクシーか。財布の中身大丈夫かな。
こっちでも金欠気味だからな。
「私のよく利用するタクシーがありますので、それを使いましょう」
一之江が小さく手を挙げて提案してくれた。
一之江が利用するタクシー……また、あのタクシーか。
「あれ、いいの、一之江さん?」
例のタクシーの事を知らない音央が不思議そうに聞く。
「ええ。問題ありません。私の家はご覧の通りお金持ちです」
未だに蒼青学園の制服を着ている一之江はそう告げた。
裕福なご家庭の御子息、御令嬢が通うことで有名な学園のその制服は、この上ない説得力を持っている。
因みに、何で未だに蒼青学園の制服を着ているのか、一之江に尋ねてみたところ。
蒼青学園の制服を1人だけ着ていることで、周りに『噂されやすくなるから』だそうだ。
謎の転入生という立場は様々な憶測を呼ぶらしく、それが広がり『月隠のメリーズドールってもしかして……』のように広がれば、その存在は強固になる、ようだ。
適度に噂されれば存在性をアピールできるからな。
「っていうわけなので、俺達は早速行ってみます」
俺がそう言うと、詩穂先輩はトトトッ、と小走りに走ってきて。
ぎゅっ、と
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