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Fate/Fantasy lord [Knight of wrought iron]
太陽のような氷
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三人の少女達と別れを告げ、再び当てもなく森の中を彷徨う。
射命丸文と接触するにしても、裏口合わせどころか互いに初対面な間柄である以上、すれ違っても気付かない可能性だって大いにあり得る。
神奈子曰く、天狗で領土外に踏み込むのは彼女ぐらいらしいし、程度としては低めではあるが。
私の場合は、噂や聞き込みを辿ればいずれ彼女へと辿り着けるだろう。
だが彼女の場合、白狼天狗の口頭による情報のみが頼り―――最悪それすらも知らない可能性での、裸一貫に等しい状態。
私が見落としてしまえば、それまでという何ともシビアな状況とも言えよう。
―――だが、神奈子は彼女が紅い外套を抱えて飛び回っていると言っていた。
ならば、それ以降の聞き込みにも持ち歩いている可能性は濃厚だろう。
とはいえ、幻想郷に来て外套を公の場を歩いたのはただの一度とて無いので、引っかかる確率は限りなく低い。
やはり、私から打って出るのが一番確実か。

「とはいえ、こちらとて当てがないのは同じだがな」

軽く溜息を吐き誰ともなく呟く。
毎日足繁く散歩したところで、いつ成果が出るかはわかったものではない。
彼女に会えるまで毎日ぶらつけるほど暇ではない。
その暇ではない割合の半分以上は幻想郷の散策なので、ながら作業で済むといえば済むのだが。

ふと、風に紛れて冷えた空気が吹いてくる。
寒風の根源へと導かれるがまま足を運ぶ。
季節も相まって、常人ならば身震いするだけでは済まない寒風が襲いかかってくる。
そんな中を進むに連れて、視界が霧に染まっていく。
濃霧の先に見えたのは、二十平方キロメートルは下らない大きさの湖だった。
そういえば木の上にでも昇ったときに目にしていた気がする。
湖に近付き、手で水を撫でる。
太陽光によって乱反射する水面は、天然の宝石と比喩するに相応しい美しさを発揮している。
寒さが生物を遠ざけているせいか、聞こえるのは自然の奏でる旋律のみ。
誰も近寄らないというのならばそれも幸運。
せめて心ゆくまでこの場を独占するのも悪くない。


「おい、そこのやつ!アタイの縄張りでなにしてる!」

そんな幻想を打ち砕く、幼子の尊大な言葉。
降りかかるようにして放たれたそれに視線を見やると、そこにいたのは両腕を組み空中で仁王立ちをしている少女だった。
背後に展開されている氷柱のような六枚羽のようなものが、彼女もまた先の少女達同様妖精であるということを告げている。

「縄張り?」

「そうだ、ここはアタイと大ちゃんの縄張りだ」

どうだ、と言わんばかりに鼻を鳴らす。
根拠も証拠もない、ただ事実のみが語られるばかりで、信憑性の欠片もない。
恐らく、彼女が勝手にそう言っているだけだろう。

「それはすまないことをした。なにぶん私は
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