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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
~恋慕と慈愛の声楽曲~
Sweet Day
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フ品ではないのだから。

真似であって、オリジナルではない。

そりゃ確かに、その多刀流自体が老人のユニークスキル《自在剣(マルチソード)》に起因しなければ発動できないので、そこをクナイに置き換えるとかの変更はしたが、それはあくまでアレンジであって根幹を揺るがすようなことはしていない。

「…………………………」

黙り込むウィルの胸中を思ったわけではないのだろうが、再び長刀をすらりと抜く闇妖精はふと話題を切り替えた。

「そういえば、ここ数日こちらが何やら騒がしいのですが分かりますか?」

「それは良い方にッスか?それとも悪い方?」

「前者です。そうですね、強いて言うなら……アインクラッドの街も、下界の街も、どこか浮かれているような」

ふ〜む、と唸る。

何かの大きなイベントがあって盛り上がるのはよくあることだが、それにしてもワールドにある全ての街が同じとは珍しい。

考えられるのは、とオフィスチェアの背を鳴らして逸らすと、ウィルは壁にかけてあるカレンダーを見た。心のどこかではもう予測は付いていたのだが、その日付を見た時予想は確信に変わった。

「あ、やぁっぱり。バレンタインッスよバレンタイン。もうじきバレンタインが近いから浮かれているんスね」

まぁ、その内容はフランス人たる自分からしてみれば異質なくらいの変貌を遂げているわけだが。主に製菓会社達の陰謀によって。

ふんすと鼻息を放つウィルだが、しかし思っていたような反応がなかなか返ってこない。訝しげに画面に視線を戻すと、そこでは困ったように眉根を寄せる巫女が一人。

「ばれん……?フランス(そちら)での流行語(スラング)か何かなのですか?」

「えーっと?もしかしてカグラの姐さんはバレンタインデーを知らないんでせうか?」

「その、自分の常識が世間の常識だと思われる口調は直すほうがよいと思いますよ」

いや結構常識だと思うんでせうが。

仮にも外人である身としては、本来のバレンタインの意味や定義を膝を揃えて懇切丁寧に説明するのもやぶさかではないのだが、そこはA Rome il faut vivre comme ? Rome(ローマにいる時はローマ人がなすように)

まぁどこかのリア充じゃあるまいに、花やケーキ、チョコすらも送る相手がいない自分にとって、西欧式か極東式かなどの違いなどにいちいち目くじらを立てる義理もないか。

そう結論を下したウィルは、ツンツン頭の先っぽをエアコンのぬるま風に間抜けに揺らしながら口を開く。

「いいッスか。バレンタインっつーのは――――」
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