第十四話 幼児期M
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ように言っておく。そのまま挨拶をしようと近づくと、相手がおじさんだとわかった。何やらぶつぶつ呟いているが、怪しい人じゃないよな。俺はその呟きを聞こうとそろそろと近づいた。
「ちくしょう、なんてこった。この近くの温泉にも混浴がねぇ。牧場近くなんだから、雰囲気にも開放的にしやがれよ。どっかに桃源郷がねぇかなー。最近じゃ、俺ほどの領域に辿り着けるやつもいねぇ。それより、本当になんで混浴温泉が全然見つけられないん…」
転移。
「ふぅ。またつまらぬものを転移させ―――」
『人を勝手に転移させちゃ駄目でしょォォ!!!』
あれは確実に怪しい人だった。だって、アリシアの教育上よろしくなさすぎる! 欲求不満すぎるぞ、あのおっさん! 水辺の近くに転移するようにしたから、運が良ければ水着のお姉さんに会えるかもしれないし、きっと許してくれるよ。春だけど。
なんだかんだあったが、とりあえず体験だけはした。牛乳は俺がおいしく飲みました。
******
「楽しかったなー」
「ねー」
『ですねー』
「にゃん」
あれからもう一回羊に突撃したり、のんびり歩いてみたりした。ちなみにリニスは無傷でした。こっそり覗きに行ったら、なんと仲良くなっていたのである。2匹で一緒にいたし。犬が服従のポーズのまま、しっぽが股の間でぶるぶる震えていたが、それは見なかったということで。
たくさん遊んだし、そろそろ帰ろう。こういうのんびりした場所って、時間の流れもすごくゆっくり感じられた。夕陽が空を赤く染めだしており、それが広い草地にも照らされている。なんだか幻想的だなー。
「あっ!」
「お?」
『どうしました?』
景色に気を取られていた俺の隣で、妹が何かを見つけたのかしゃがみこんだ。妹に抱っこされていたリニスも驚いたのか、妹の腕からとんっと抜け出し、足元に着地する。アリシアの行動に不思議そうに覗きこんでいた。
「うさぎさんがいた!」
「え、まじで。どこどこ」
「ここっ!」
妹が元気よく差し出してきたのは手のひら。そこには、小ぶりの小さな石が乗せられていた。ちなみにうさぎさんがライダーさんを怒らせて石化させられたとかではなく、もともと石なのであしからず。長い耳がついた様な丸い石。確かにうさぎの形によく似ていた。
「へー、かわいいな。四つ葉とかこういうのって見つけたらなんか嬉しくなるよな」
「うん! うさぎさん、お母さんに見せてあげるの」
「いいんじゃないか。せっかくだし、リビングのテーブルの上にでも飾ってあげようぜ」
『それはいいですね』
「にゃー」
アリシアはぎゅっと手のひらにうさぎの石を包み込み、大切そうに運ぶ。こんなにも喜んでくれる相手がいると、こっちも連れて
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