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ひねくれヒーロー
【閑話】理屈をこえた 月下香
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チューベローズ・月下香
?危険な楽しみ?
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【閑話】理屈をこえた 月下香







山の天気は変わりやすい

小雨がパラパラと、降っては止み降っては止み・・・
男が歩みを進めるたびに、抜かるんだ地面が凍てついた北国の地へと変貌する
徐に太陽を仰いで、男は呟いた

「・・・一日もありゃ、着けるか・・・」

男には旅の道連れなどおらず、気ままな一人旅だと見受けられる
しかし、たしかに男は誰かに確認をとるかのように呟いた
態々傍らに顔を向けて


半ば無意識の言動を恥じるように口元を覆った男
彼には旅の道連れなど、もういないというのに

その死を男は確認したというのに、どうしても縋りついてしまうのだ

起こり得ぬ奇跡とやらに

祈った所で死者は蘇らない

足早に進む男の心中は穏やかではなく、苛立ちを眉間に表している
しばらく無言で突き進むうちに険しい山道が終わり、開けた場所に出た

その場所からは町を確認できた

「・・・雪、いや・・・春の、国か」

いつの間にか小雨から雪に変わっていた
穏やかに降り続ける雪から身を守るように、しっかりと外套を整え町を目指す

雪に僅かな思い出と、想いを馳せて

男はただ歩を進めた












人々の賑わいは寒さを跳ね除け、雪すら溶かす熱さを持って男を迎え入れる
宿を探し歩く男は物珍しげに周囲を眺め、時折商店を冷やかす

ふと鮮やかな色彩が視界に入り眺める

少々前に話題となった映画、風雲姫のグッズを取り扱う商店だった

手にしたパンフレットには、主演女優の姿が華々しく描かれている

「・・・確か、アイツ見に行っていたな・・・」

脳裏に浮かぶのは小さな体躯の弟子
男の持つ技術、無音殺人術とそれに必要な基礎を授けた童子
何故か思い出の中の弟子は、妙に腹立たしく思える誇らしげな顔をしていた

その顔がドヤ顔と呼ばれることを男は知らなかった

弟子とその友人たちが休暇に観に行ってきたと、男の友人であるペイン長門から聞かされた覚えがある
映画などの俗事に興味のない人間だと思っていたため、男は珍しく自分から感想を聞き出した

??・・・どうだった???

??・・・疲れた??

たった、一言だった
言葉に違わず疲れきった顔をしていたため、それ以上深く問いはしなかった


パンフレットを流し読み、チケットを購入する
たまには悪くない
口布で覆われた、その口元が緩んでいることを知る者はいなかった
翌日分のチケットを懐に仕舞い、宿探しを再開

ほんの少しだけ
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