A's編
第三十三話 前
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ずに引っ張られるままになのはちゃんから離れる方向へ引っ張られてしまう。よくよく見れば、クロノさんやユーノくん、はやてちゃんもなのはちゃんから距離をとろうとしていた。
なんでだろう? と思ったのだが、その理由はすぐにわかった。僕もわずかにわかる程度だったが、なのはちゃんを中心としてすごい量の魔力が渦巻いているからだ。まさか、このまま魔法を放つのだろうか、と思っていたが、不意になのはちゃんが僕のほうを向いて大人の顔でどこか元の子どもの時のような面影が残った嬉しそうな表情で笑う。
「それじゃ、ちょっと行ってくるね」
どこに? という疑問が浮かんだが、その疑問を頭の片隅に置いて、これから僕たちでは手の出しようのない脅威に向かうなのはちゃんに向かって何か言わなければと考え、今日の屋上でのなのはちゃんの言葉を思い出しながら口を開いた。
「なのはちゃん! 頑張って!」
僕の声を受けて、なのはちゃんは一瞬、きょとんとした表情を浮かべたけれど、僕に言われたことの意味に思い至ったのか、また同じような笑みを浮かべて大きく頷き―――次の瞬間、彼女の姿は僕の目の前から消えた。
「………え?」
あれ? あれ? 突然消えてしまったなのはちゃんに動揺してしまい、思わず左右を確認してしまう。だが、そこに当然の様に彼女の姿はなく、また先ほどまで海上で禍々しいまでの気配を発していた黒繭も存在していなかった。そして、なのはちゃんの行動に対して即座に反応したのはクロノさんだった。
「エイミィ! 状況を」
『オーライ、任せてよ』
クロノさんがすぐさま念話で話しかけたのはオペレータとして参戦しているらしいエイミィさん。ここに姿が見えないと思っていたら、どこかでオペレートしているらしい。僕たちに聞こえるようにしているのはサービスだろうか。
少しの間、カタカタとキーボードをたたくような音が聞こえて、え? と驚いたような声が聞こえたが、気持ちを切り替えたのか、はぁ、と大きく深呼吸をした後に何でもないような明るい陽気な声で現状を伝えてきた。
「えっとね、うん、信じられないけど、どうやらなのはちゃんは、そことはまた別の位相に空間を作って移動したみたいだね」
位相―――この空間が結界の内部だというのはわかる。僕もユーノくんから基礎は学んだからだ。つまり、簡単に言ってしまえば、なのはちゃんは別の場所に結界を作って移動した、ということなのだろうが、クロノさんがエイミィさんからの報告を聞いてしばらく固まった後、大きく息を吸って吐きながら気持ちを落ち着かせているところを見ると、どうやら彼女がやったことは普通ではないらしい。
「まったく、もはや彼女は何でもありだな」
「かもね、闇の書ごと転移しているみたいだからね」
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