A's編
第三十三話 前
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「………君にできるというのかい?」
「できるよ。ねぇ、レイジングハート」
『No, problem』
なんでもないようになのはちゃんはレイジングハートに確認し、レイジングハートもそれに応えるように自分自身を何度か点滅させて答えていた。
その返答にクロノさんとユーノ君は絶句という言葉が似合うほどに表情に驚愕という感情を張り付けていた。言葉もないというはこのようなことを言うのだな、と僕自身も驚く頭の片隅で思った。
なにせ、闇の書の一部とはいえ、日本そのものを破壊してしまうほどの威力をもっている存在ないのだ。それをどのようにして回避しようか、と時空管理局という一組織が考えていたにも関わらず、彼女は―――なのはちゃんはそれを個人で行えてしまうのだから、彼らが絶句するのも無理はない。
あるいは、クロノさんたちが抱いているのは無力感だろうか。クロノさんは僕から見れば、己の職務に忠実―――使命感のようなものを持っているようにも見える。僕を子どもとして巻き込んでしまったことにも申し訳なさを感じているようにも見えるのだから、尻拭い的なことまでやらせてしまうことは彼にとっては忸怩たる思いだろう。
だが、それでも彼は決断するだろう。なぜなら、時間的猶予が、彼らのリソースがその判断を下させる。
現にクロノさんは悔しさそうな顔をしながら、唇を噛みしめ、それでも、やがて意を決したように顔を上げて、硬い顔で口を開く。
「大変申し訳ない話だが―――頼めるだろうか」
「あ、あの―――なのはちゃん、僕からもお願いできないかな?」
差し出がましいとは思ったが、それでもクロノさんからだけよりも、友人である僕からも頼んだほうが、なのはちゃんもうなずいてくれるのではないか、というある種の打算をもって、僕も口を出す。情けない話だが、この場ではなのはちゃん以外に事態を収束できる人物はいない。
「うん、任せて」
なのはちゃんはクロノさんが頭を下げて申し出たことにあまりにあっさりと快諾してしまった。今まで悩んでいたことはなんだろうか? というほどにあっさりと。ともすれば、なのはちゃんが闇の書の強さを知らないんじゃないか、と不安になるほどにあっさりと。
「えっと―――いいのかい?」
クロノさんも不安になったのかもしれない。改めて確認するようになのはちゃんに問いかける。だが、それに対しても、なのはちゃんはコクリとうなずいて承諾の意を示した。そして、不意に右手に持っていたレイジングハートを掲げる。
「お兄ちゃん、少し離れたほうがいいかも」
「え?」
僕の後ろに隠れるようにして立っていたアリシアちゃんが不意に僕の袖を引っ張る。浮遊魔法で浮いているだけの僕にはその場にとどまることはでき
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