A's編
第三十三話 前
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好をし、その手には不思議な杖を持ったはやてちゃん。しかも、よくよく見てみれば、髪は白くなり、背中には六枚の黒い翼のようなものまで生えているではないか。一見すれば、バリアジャケットの様にも見えるが、こんな身体にまで影響を与えただろうか?
そのあたりの考察はおいておくとして、ひとまずははやてちゃんの無事を確かめるためにタンと、と空中を蹴りだした。空を跳ぶためには必要ないのだが、なんとなく飛び出すという行為が僕にはまだ必要なのだ。
「あ、お兄ちゃん」
僕がはやてちゃんに近づくために移動することに気付いたアリシアちゃんも僕のあとを追ってくる。魔法の使い方はどうやらアリシアちゃんのほうが得意らしく、若干遅れて飛び出したとしても追いつくのは容易のようだ。僕の後ろにぴったりとついてきていた。なんというか以前のアリシアちゃんとは性格が内向きになってしまったことに違和感を覚える。それでも彼女はやっぱり僕の妹なわけだが。
地面を蹴りだす要領でゆっくりとはやてちゃんに近づいていくと、途中で彼女も僕に気付いたのか笑みを浮かべて僕を迎えてくれる。
「ショウくんっ! 無事やったんやね! そっちの妹さんも!」
僕の後ろに隠れていたアリシアちゃんを見つけると、はやてちゃんが嬉しそうに言ってくれる。はやてちゃんと別れたのはアリシアちゃんのことがあったからで、はやてちゃんも気にしてくれていたんだろう。
「それは僕のセリフだよ。どうやらお互いに大丈夫だったみたいだね」
近づいて上から下までじっくりと見てみても彼女に傷ついたような場所はなく、至って健康そうである。よかった、と一安心したところで改めてここにいるはずの彼女がいないことに気付いた。あの夢の世界の中ではやてちゃんの隣に立っていた年上の女性の姿がない。はやてちゃんを主と呼んでいたあの女性だ。
「それで、その恰好はどうしたの?」
「あ、これか? これはリィンフォースと私の甲冑や」
「リィンフォース? 甲冑?」
はやてちゃんが、どうだ! と言わんばかりに胸を張って答えてくれたのはいいのだが、どうにも言葉の意味が理解できない。今の僕の心情を現すとすれば、頭の上に複数のクエッションマークが浮かんでいることだろう。
「ああ、そやった、何も説明しとらんかったな」
そういいながら、はやてちゃんは一つ一つ説明してくれる。
リィンフォースとは闇の書の管理人格の新しい名前であること、甲冑とは古代ベルカのバリアジャケットのようなものであること。古代ベルカとは、新しい名称ではあったが、ついでに教えてもらったところ、どうやら僕が使っているミッドチルダ式と言われる魔法とは別の魔法形態―――古代とついているからには古い魔法形態のようである。
「はぁ、なるほど」
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