第四章 『再会』
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は作品の一つである『炎の魔人』を召還し、その拳が扉をいとも容易く吹き飛ばした。
「おーいやーなつかし――」
ハルナは久しぶりに帰ってきた麻帆良学園の眺めに、実感はまだ湧かないながらも、懐かしさを覚えていた。魔法世界という非日常的な世界で数多くの亜人種に囲まれ、筆舌に絶えない苦労をしてきたのだ。無理はないだろう。
しかしハルナは、目の前に広がる麻帆良学園の光景に、どこか違和感を覚えた。 麻帆良学園であって、麻帆良学園でない様な違和感。ハルナはその違和感の正体に、すぐに気が付いた。
白黒。白黒の世界だ。色が抜け落ちたような白黒の世界が広がっている。それだけではない。誰も居ないのだ。空から船が落ちて来たというのに、野次馬の一人も、居なかった。見渡すかぎりの無人の世界。
「なに……これ、どういうこと?」
ハルナは心臓が逸るのを感じ、妙に心拍の音が大きく聞こえていた。どこか落ち着かない、胃がどんよりと、重く渦巻いているような感覚にとらわれる。目眩がしているように、世界が歪んで見える。
「――ルナさん! ハルナさん!」
嫌な感覚がハルナを襲う中、船内から茶々丸の声が聞こえてきた。ハッとしたハルナは、急いで茶々丸の元へ駆け付けた。今は一人でいたくはない。誰かと一緒にいたかった。
船内に戻ると、茶々丸はなんとか生きているコンソールを弄っていた。
「ど、どうしたの?」
ハルナが茶々丸へ問い掛ける。恐らく外の事だろうと予測はついていたが、そう聞いた。元の世界に帰ってきたことを否定したくなかったのかもしれない。
「どうやらここは私達がいた世界、旧世界ではないようです」
しかし茶々丸の返答は無情なものだった。分かっていても辛いものだった。
「じゃあここは?」
ハルナの問い掛けに茶々丸は、少しコンソールを操作した。すると、大小2つの立体的な球体が、空中に映し出された。映像の出力装置にダメージがあったのか、映像にはノイズが走っている。
「左の球体が旧世界、右の球体が魔法世界です」
茶々丸は自身にインストールされている旧世界の座標データと、『グレード・パル様号』にインストールされている魔法世界の座標データを視覚化したようだ。
「本来なら私達の現在地は赤い点で表示されるのですが、何度試してもどちらの世界にも私達の現在地が割り出せません」
「それじゃあ、ここはいったいどこなの?」
ハルナの言葉に茶々丸は私見を述べて返した。
「あくまで憶測ですが、異界境界を突破してきたことや外の様子から考えると、旧世界でも魔法世界でもない世界。世界と世界の狭間に居る可能性が高いです」
茶々丸の考えは概ね正しかった。ただ一つ違う点は、ここは旧世界と魔法世界の狭間ではなく、旧
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