第四章 『再会』
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体の奥底から魔力が引きずり出されるような感覚に、ダンテはとらわれていた。ダンテはその、血が逆流しているかのような独特の感覚を知っている。
互いに偉大な父の血を引きながらも、かつて袂を分かち幾度となく殺し合った兄の魂の慟哭。力だけを追い求めたその悲痛なまでの魂の叫びに、ダンテの魂が呼応しているのだ。
しかし、それはもはやありえないことだ。なぜなら、バージルは6年前のマレット島で、母の形見であるアミュレットを残して文字通り跡形もなく霧散して死んだからだ。なにより、そのバージルを手にかけたのは、他でもないダンテだった。バージルの死は、ダンテが一番知っている。
だがダンテの魂は、兄バージルの存在を克明に感じ取っていた。魂に導かれるまま、ダンテの双眸は氷の一角へ向けられていた。
ダンテの燃え上がるように赤いコートとは対照的な、凍てつくような青いコート。ダンテの降ろされている銀色の髪とは対照的に、撫で付けられた銀色の髪。ダンテが携える両刃の大剣とは対照的な片刃の刀。ダンテとは対照的なその姿は、間違いない。バージルだ。
しかしその顔は石像のように白く、血管であろう青い筋が幾つも怒張している。さらにその目は、赤々とした妖光を放っている。よもやその姿顔立ちは、ダンテと双子であるとは思えないものだった。
その姿を見たダンテの脳裏に、6年前の記憶がフラッシュバックした。
黒い天使の名を持つ騎士。湧いて出てくる掃きだめのような悪魔達の中でも、それだけは異彩を放っていた。なぜなら、本能に忠実に生きる者が多い悪魔という種族の中で、誇りを持って戦っていたからだ。言葉を交わしたわけではない。しかしダンテはそれを感じ取り、剣を交えて確信していた。
そして玉座とも舞台とも思わせる部屋で彼等は対峙していた。それまでの二度の戦いでは、辛くもダンテが勝利してきた。そして三度目の戦い。全力で戦うため、魔力を解放させ、騎士は今まで付けていた仮面を遂に取った。その仮面の下にあった顔は、今ダンテが見ているバージルのそれと全く同じ。
死んだはずのバージルがなぜいるのか、正確に言えば“誰”がバージルを蘇らせたのか、ダンテは直ぐに分かった。ダンテがその者の名を口に するより前に、バージルは動いていた。
半身を引き、腰を据える構え。それはバージルが得意としていた、居合いの構えだ。
バージルが手にしていた魔刀W閻魔刀“の鯉口が音もなく切られ、白刃が走る。一目には虚空を一閃したようにしか見えない。しかし次の瞬間、そびえ立つ『終わりなく白き九天』の氷が切り刻まれた。そして――。
「な、なんだ!?」
桜咲刹那や龍宮真那も合流し、“神楽坂明日菜”の人格の覚醒まであと少しというところまで来ていた千雨達が、突然の出来事に驚き、声をあげた。祭壇を覆う結界とその内側に広がっ
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