暁 〜小説投稿サイト〜
立派な魔法使い 偉大な悪魔
第三章 『イレギュラー』
[10/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
かけて……姫さんを連れ戻してやれ。お前達でしかできないことだ」

 千雨は頭に何かが乗せられた気がした。気のせいかもしれないが、千雨にはそれは声の主――ジャック・ラカンのものだと確信した。姿は見えないし、もう声も聞こえなかった。しかし千雨は既に動いていた。

「聞いてくれみんな! 今からみんなで“神楽坂明日菜”に呼びかける! 私達の声が届けば、あのバカならきっと答えてくれるはずだ!」

 黄昏の姫御子はもはや儀式に埋没してしまっている。もはや望みは黄昏の姫御子の表層人格である“神楽坂明日菜”に呼びかけ、内側から結界を破る他ない。これは賭けであった。

「貴様らは雑魚を抑えておけ! 私が一撃で終わらせてやろう!」

 乱戦の様相を呈する中、エヴァンジェリンが膨大な量の魔力を集めだす。それは砲台である魔法使いが放つ巨大な一撃を放つ前兆であった。

「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック『契約に従い我に答えよ。闇と氷雪と永遠の女王、咲きわたる氷の白薔薇、眠れる永劫庭園!」
「イカン! あれは」
「あれはマズイ! ヤツを止めろ!」

 エヴァンジェリンの詠唱を聞いた使徒たちが焦りだした。特にデュナミスとセクンドゥムは、詠唱の一節を聞いただけでもそれの危険さは分かったようだ。すぐさまクゥァルトゥム、クゥィントゥム、セクストゥムがエヴァンジェリンを囲み、仕留めに来る。三体の使徒に囲まれたとなると普通に考えれば圧倒的に不利だろう。
 しかし流石といったところか、エヴァンジェリンは詠唱中にも関わらずその三体に一瞬で肘、掌底、手刀を叩き込んだ。使徒の襲撃などなかったかのようにエヴァンジェリンは詠唱を続ける。

「来たれ永久の闇、永遠の氷河!」

 弾き飛ばされたクゥァルトゥムとクゥィントゥムは、着地するとすぐさま反撃に出ようとした。しかしそこへ二人に分身した近右衛門が追撃を入れ、さらにエヴァンジェリンから引き離した。

「チィッ! 『完全なる世界』全記録書庫より強制召喚!」

 劣勢と見たのか、デュナミスが『造物主の掟』を使い、召喚術を行使した。巨大な魔方陣から姿を現したのは、ヘラス帝国帝都守護聖獣の一体である古龍龍樹だ。
 龍樹は巨大な翼を広げ、耳をつんざく咆哮を上げた。咆哮が大気を震わせ、巨大な脚が大地を揺るがす。この龍樹は古龍に分類される。古龍は吸血鬼の真祖と同格に最強種と謳われる存在であり、神に準ずる存在とも言われている。

「龍樹! これは厄介ですね」

 クルトが思わぬ龍樹の召喚に悪態をつく中、その横を赤い残像が横切った。それは、ダンテだ。大きく踏み込んで跳躍したダンテの手には銃も剣も握られていない。握られていたのは拳だ。

「Ha! Eat this!」 

 その拳を思い切り龍樹の鼻先に叩きこむ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ