暁 〜小説投稿サイト〜
炎髪灼眼の討ち手と錬鉄の魔術師
”狩人”フリアグネ編
七章 「夜に二人」
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程苦ではない。だが、この空間だとかなりキツいんだよ。何せ無理矢理な形で俺を押し込んでるんだぜ? ほら、現に周りの物はさっき俺がぶつかった衝撃で、今まさに崩れ始めたし。
「……え゛!?」
 今まさにって、マズ――ッ!
 い、とまでは言い切れなかった。寄りかかっていた壁に体重をかけた途端、壁が倒れてしまったからだ。
 俺はすっかり忘れていたのだ。今居る場所は押入れの中で、寄りかかっていた壁は襖。その上、かなり危険な状態で踏みとどまっていた収納品の山々に衝撃を加え、唯一の防波堤――ついでに言うなら既に瀕死だった襖にトドメをさしてしまった。
 結果、気付いた時には時既に遅し。俺は押し入れの外に頭から転がり落ちていた。
「うぅ……」
 押入れから転がり落ちる。惨めな事に逆さになった視界の中心には、当然の様にお着替え真っ最中のシャナ。ちょうど衣服を全て脱いだ所だったらしい、女性の最終防衛ラインたる布切れを手にして、立っている。
 これまた当然の話だがその姿は、一糸纏わぬ生まれたままの物だった。

「「………」」

 突然の事態に目を丸くしているシャナと目が合う。きっと俺も同じ顔をしているに違いない。彼女を相手に、ラッキー♪ なんて言える程、俺の器はでかくない。
「………ま、待て! 話せば分か―――、ぐぇッ!?」
 シークタイムはコンマ1秒。脊髄反射で謝罪をしたが、言い終える前に全身に強烈な衝撃が走る。
 すげぇ、床に張り付いた体勢の俺を一息で踏み込むと同時に浮かせて、顎に一撃。もとより動ける訳もないが、確実に行動不能にした上で全身を見境なくフルボッコ。
 この一連の動作をほぼ同時に行う技量。俺の痛覚が知覚した痛みの順番を追わないと何をされたのかサッパリ分からなかった。
 フレイムヘイズ――、侮り難し。
 薄れ行く意識の中で俺の眼に映ったシャナの顔は、空腹王やあかいあくま、腹黒後輩に年上の妹を彷彿とさせる。
 目力だけでライダーの石化魔眼『キュベレイ』と同等の効果を発動してるんじゃないかと、マジで疑うレベルだぜアレ。

 ―――、どの世界でも女の怨みは同様に恐ろしい。


 そこで俺は意識を失った………。


  ◇


 真夜中、俺は全身の痛みで目を覚ます。どうやら、奇跡的に命だけは助けてくれたらしい。
 痛む体に鞭を打ち気合いで起こして、ベッドを見る。そこには毛布に包まれた小さな膨らみがあった。
 あんな事があったってのに、スヤスヤと眠ッてるぜおい。アレだけを見ると一見平和な光景に見えるだろう。しかし同時に、先程の惨劇を物語る物が目に入った。
 ベッドの前の床に、抜き身の贄殿遮那が突き立っている。主人を護る忠義の刀ってか? さっきのは偶発事故って奴だ。故意じゃない。
 ――イカンイカン。太刀に八つ当た
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