”狩人”フリアグネ編
六章 「狩人」
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なければ、こう何度も身代わりの外殻を装備しないだろう。昨日のアレも今日の巨躯も武器というより、中身を守る為の防具に見えた。
さて、どう出るフリアグネ。動揺で狼狽えるか、それとも怒り狂うか。
だが奴の反応は、想定していたものと少し異なっていた。
「マ、――――マリアンヌッ!!」
調子外れな叫びをあげるフリアグネ。その顔は悲しみの色に染まっている。
「あぁ……ごめんよ、私のマリアンヌ。こんな物騒な子と戦わせてしまって………」
―――いや、その反応はちょっと予想外だよ。狼狽というレベルを軽く通り越してるじゃないか。
考えろ、次のフリアグネの反応を。曲がりなりにも当初の目的は達した。なら、この流れを利用して最善の手を打たなければ。奴が立ち直ってしまっては意味がない。
怒りを誘発して手の内を晒させる。あるいは、畳み掛けて一気に危機に追い込んでやる。
どちらにせよ、焦りは禁物だ。この一戦で仕留める必要はない。
「―――ッ!?」
いつの間にかフリアグネの指先には、一枚のカードが挟んであった。
言うまでもなく、最初に襲撃してきたトランプだ。だが、いつ回収した?
確かに次の策を思考していたが、その間も警戒は怠っていなかった。
不自然な動作をとった様子は見られなかった。あまり自分を過信しては危険だが、俺の眼を盗んで行動は容易な事ではない筈だ。
となると、俺の眼では奴の動作を察知出来ないという事になる。フリアグネだけじゃなくて、全周囲を警戒しなければならない。
奴は俺達に気取られず、カードによる布陣を敷く事が出来るかもしれない。
あのカードの威力は、シャナですら防御に専念しなければならない程だ。
俺には防ぐ手段などない。一方行からでなく、全方向から飽和攻撃を仕掛けられれば、それで終わりだ。
そんな俺の懸念を知る筈もないフリアグネは、芝居がかった動作でカードを一振りする。途端、足下に焦げて散っていたカードが、一斉に宙を舞った。
風を巻きながら、カードの群れはフリアグネの指先に収束する。一枚になったカードは、四分の三程を焦がして、欠けていた。
罠を張り巡らせるタイミングとしては、あの奔流に乗じるのが最良だろう。当然、俺としても周囲を気付かれないように警戒したが、どういう訳かカードが設置された気配はない。
動作を察知出来ずとも、配置されたカードを見逃す程の間抜けではないつもりだ。
欠けたカードを見てフリアグネは、また表情を変える。
「へぇ、私自慢の『レギュラー・シャープ』を、腕っ節だけでこれほど減らすとはね」
―――危険な相手だって事は、疑いようもないな。
ただ、感情の制御が上手いだけじゃない。起伏を見せ付ける事で、こっちの調子を狂わせてくるなんてな。相当の知略家だ、奴は。
流れる
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