”狩人”フリアグネ編
六章 「狩人」
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アラストールが、僅かに声を低くする。
「フリアグネ…? そうか、貴様がフレイムヘイズ殺しの“狩人”か」
フリアグネという名の男は口を笑みの形に曲げた。
「殺しの方でそう呼ばれるのは、正直な所、あんまり好きじゃないな。本来は、この世に散る『紅世の徒の宝』を集める、それ故の真名なんだけれどね」
そう言って、フリアグネはコキュートスに視線を移す。
「そう言う君は、我らが紅世に威名を轟かせる『天壌の劫火』のアラストールだね。直接会うのは初めてかな? こっちの世界に来ている事は聞いていたけど、君のフレイムヘイズも初めて見たよ」
次いで、シャナに目をやる。
「……なる程ね。これが君の契約者『炎髪灼眼の討ち手』か。噂に違わぬ美しさだ。でも、少々輝きが強すぎるね」
フリアグネの感想を聞き流しているシャナに、アラストールが注意を促す。
「見かけや言動に惑わされるな、多数の宝具を駆使し、幾人ものフレイムヘイズを屠ってきた、強力な『王』だ」
俺はというと、完全に蚊帳の外状態で正直な所、何をすれば良いのか考えあぐねていた。
こっちの世界の事情は、まだほとんど理解出来ていない。目の前の男が王だという事は一目で分かったが、結局はそこ止まり。それ以上の事は何も分からない。
下手に敵を刺激する訳にもいかないし、ここはだんまりを決め込むしかないな。
「うん、感じてる」
シャナは、いつでも踏み込める体勢を取っている。当然の対応だろう。あのフリアグネという奴は、まずこちらを先制攻撃してきた。話し合いに来るにしては過激な挨拶である事は言うまでもない。
となると、状況から察するにさっきの人形は斥候だろう。しかも、あわよくばこちらを制圧しようとしていた事は疑いようもない。
斥候による当初の目的の偵察に失敗し、奴が自ら威力偵察に来た。そんな所だろう。
その証拠に、奴の言動は最初から挑発的な物だ。
会話の主導権を握る為に相手を挑発する。挑発に乗り冷静さを欠いた相手ほど御し易いからな。
そうなると、状況的にはこちらが不利になる。あの感じだとフリアグネは相当の話術を持っている。恐らく会話だけでは、俺達は主導権なんて握れない。
そうなると、こちらの切り札は一つだけになる。効果は未知数だが、それでもこちらが使えるカードはあれだけだ。
吉と出るか、それとも凶と出るか。
「ふふ、そんなしかめっ面をしなくても……」
そう言いながら、フリアグネは何気なく床を見回す。そこでフリアグネの動きが止まった。
―――気付いたか。
奴の視線の先には、無惨に放り出された人形。言うまでもなく昨日、そして今日も俺達を襲ってきた人形だ。連日襲ってきたという事もあるが、この人形は明らかに他の手下とは違う。
少なくとも他の手下よりも上格なのだろう。で
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