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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第109話 蓮の花
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が跳ね、強く踏ん張った右脚の膝が僅かに土で汚れる。
 しかし、この娘の身体能力も並みの女子高せーじゃないでしょうが。

 普通の女子高校生ではヒット性の当たりを三遊間の真ん中辺り、バックハンドで捌き、二塁ベースを確認せずに、それもある程度以上のスピードボールを投げるような真似は出来ませんよ。

 心の中でのみ悪態を吐き、こちらも動きを停滞させる事もなくベース上に投じられたボールをグラブに納め、その勢いを利用してファーストに送球。
 そして次の瞬間、小気味良い音を響かせて真新しいファーストミットへと吸い込まれる白球。

 常人には考えられない運動能力を可能とする人工生命体那托や、龍種の俺が関わっている以上、下手な高校球児よりも流麗な動きで完成させられた6−4−3のダブルプレイ。
 実際、内野手をやって居て一番気持ちが良いのが、これが決まった瞬間。

「上手いじゃないの、涼子!」

 妙に小柄で華奢な体型のキャッチャーから新しいボールを受け取りながら、監督兼エースのハルヒが彼女にしては珍しい――。
 そう考えてから、しかし、その考えが的外れである事に直ぐに気付く俺。
 確かに、ハルヒのようなタイプの人間が他人を誉める事はあまり多くはないでしょう。一般的な例から考えるのなら。但し、俺がこの世界にやって来てから関わるようになった涼宮ハルヒと言う少女の台詞を思い出すと、結構、自らの周りに居る人間を誉めて居るような記憶が有ります。
 ……と言うか、むしろ貶されているのは俺だけ。

 もっとも、大雑把でいい加減。面倒臭がりで、ついでに何時も一言多い俺ですから、色々と言いやすい相手。更に普段の言動、及び行動にツッコミ所が多いのも事実。おそらくそう言う部分が、彼女の言動を助長しているのだと思いますが。



 色々と有った誕生日の十二月六日が終了。こちらの世界に来てから初めて有希以外の人物……神代万結に起こされるトコロから始まった十二月七日。
 ここは西宮の某所にある河川敷のグラウンド。月曜から始まる球技大会の練習用に学校が借りて置いてくれた場所で練習する事と成ったのですが……。

「次。ノーアウトランナー一塁。カウントワンストライク、ワンボール。セカンドゴロ」

 くだらない。本当に今、考えても仕方がない事を考えながらも身体は素直にボールの動きに反応。セカンドベース寄りに転がって来たゴロを素早く処理。
 その瞬間、未だセカンドベースに入っていない朝倉さんとアイコンタクト。
 そのままの勢いを持ってベース上へとグラブトス。

 そのゆっくりとしたトスをグラブで正確に受け取った朝倉さんが、今度はベースを蹴って軽くジャンプを行いながらのファーストへの送球。これはおそらくランナーが突っ込んで来る事を想定しての動き――

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