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乱世の確率事象改変
変わらない黒
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二人掛かりでも捕えられなかったというのは屈辱に値するが、あの異常な戦場では詮無きと割り切ってもいる。

 ただ純粋に、武人としてではなく戦人としての自分の価値が知りたい。

 皆違って皆いい……そういう綺麗な言葉で誤魔化してはならない。曹操軍の掲げる実力主義とは、個性を持っていても有用な価値としての証明が無くては話にならないのだ。
 誰かから評価されるというのは、自分の力が分かり易く理解出来るということ。
 例えば沙和は……ふわふわしているように見えて周りとの協調性が高く、民の評判はかなりいい。
 自信なく過ごしていた彼女だが、秋斗が他人に話す誰かからの沙和に対する評価を耳に挟んでから自信が出てきたらしく、華琳や軍師達の間でも期待の目を向けられている。
 では、凪はどうか、と聞かれると答え辛い。
 真面目で愚直。それは素晴らしいことだが評価しにくいしされ難い。
 承認欲求は人が持つ欲でも大きい。寡黙な凪としては、誰に話すこともできずにもやもやと過ごしているのだ。
 そんな彼女が、この十面埋伏の策で自分の価値を知れる絶好の機会を得た。
 単純な個人武力の差、邪魔の入らない一騎打ちに限って言えば凪に軍配が上がり、部隊の指揮能力で言えば……長く戦を経験してきた斗詩の方が上。
 純粋に部隊同士の力では敵に分がある。どちらかと言えば戦うべきでは無い。

――しかしやはり、此処は自分が……

 そうして一騎打ちになど突入することなく、膠着している戦場が二刻ほど続いていた。
 他の部隊が戦っているし、別段急ぐこともない。落ち着いて、練兵を思い出しながら部隊の指揮をし、自分も戦い、ほぼ互角の有様。
 斗詩はというと……必死で兵に指示を与えているが焦燥を欠片も見せぬモノ。ではあっても、小隊、中隊、大隊それぞれの指揮官の絶対数が少ない袁紹軍では自分が戦いに参加することもままならない。
 主だった敵は既に戦意が低く、未だ敗走しないのが不思議なほどなのに、斗詩が率いるだけで勇気を取り戻して戦いに戻って行く。

――自分の部隊とは……何処が違う? 自分とは……何が違う?

 此れが官渡の戦いに於ける最終戦ということも相まってか、昔から彼女と共に過ごしてきた斗詩の部隊は特に士気が高い。それに呼応して弱気な兵が力を取り戻す。なりふり構わぬ必死な戦いなれど上手く連携も出来る不思議な動き。正直、凪にはわけが分からなかった。
 凪の部隊と違いがあるとするならば……将に対する信頼や絆の深さなのだが、凪では気付けない。
 此れは曹操軍の遣り方の穴。
 新兵を凪達に任せるということは、凪達の為だけの兵は出来上がらないということ。春蘭や秋蘭の部隊の強化はつつがなく出来上がるも、後続が追いつかない、育たない。
 この戦が終わってから、と華琳は考えて
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