変わらない黒
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たい、会いたいと心が喚き散らす。もう抑えられない程に育った想いが、私の心をかき乱す。
その姿は、私が見たくて仕方なかったモノ。彼らと共に戦う……乱世を住処とする黒の……
僅かに回る頭で弾きだされた答えは、私が望んでいた結果とは全くの別モノだった。
「どうして……っ……あなたが其処にいるんですか……っ!」
誰かの為に戦って欲しくなんか、なかったのに。彼はいつでも私の想像を超えて行く。
彼らと合流したという事は、たった一人で、紅揚羽の願いを叶える為に彼は戦いに向かったのだ。
命を投げ捨てるように、誰かの為に無茶な戦場に向かったのだ。
どうしてあなたはいつもいつも、そんな戦いしか出来ないんですか……。
どうしてあなたは、自分の事を大切にしてくれないんですか……。
――どうしてあなたは……優しくて哀しいあなたのままで……居るんですか……。
私の願いはあなたの平穏。それなのにあなたは、いつでも乱世に生きる事しか望んでいない。
そんな簡単に自分の命を使い捨てないで。
人を救いたいのなら、もっと自分を大切にして。
心の底から……自分が幸せになりたいと……願って。
命を賭けるのは正しい。でも、命を投げ捨てるのは違います。世に平穏を作りたいのなら、縋り付いてでも生きようとしないとダメなのに……。
あなたはまた、そうやって繰り返して、たった一人になっても進もうとするんですか。
胸の奥にしまっていた大切な想い出が溢れ出す。幾多も、幾多も溢れる彼との宝物が、私の思考をかき乱す。
始まりの時、暖かく包み込んでくれた彼はもういない。
雛里には敵わないな……と、優しく笑ってくれた彼はもういない。
ただいま……と、笑い掛けてくれた彼はもう、いない。
――それとも……もしかしたら……壊れないままで……私の大好きな彼が……
首を振った。そんなはず、無い。
深く繋ぎ過ぎた絆から。長く付き続けた大嘘から。ずっと貫いてきた矛盾から。彼が壊れないなんて、有り得ない。
彼は優しすぎる。強くなんてない。世界の為に戦う英雄になんて、本当はなりたくなんかない弱い人。
削って、削って、心を擦り減らして、そうして戦ってきた。だから、きっと彼は戻っていない。
否定する頭に反して、心が希望を感じてしまう。
――会いたい。会いたい、です。声を聞かせて。抱きしめて。頭を撫でて。また……いつものように笑って――
封じ込めた想いはこんな簡単に殻を破って溢れ出る。
「……っ……」
――ああ、ダメだ。私はやっぱり……彼の事が……
涙が止まらない。胸が苦しい。すぐに彼の元に駆けて行きたい衝動が湧いてくる。
でも……
「鳳統さ……ま……?」
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