変わらない黒
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戦の最中、鳳凰で居ないとダメなのに……彼の事を考えるだけで、こんなにも私は弱くなる。ただの雛里に戻ってしまう。
もう私は嘘つきだから、あなたに想いを伝えることなんか出来ない。
私があなたを嘘つきにする。どうか……憎んでください、嫌ってください。あなたが一番嫌っていた大嘘つきは、私が背負いますから。でも……
――あなたが幸せに、平穏に生きてくれる事を願っています。
苦笑を一つ。割り切る為に。私を知らない彼が誰かの隣で、心からの笑顔で居てくれる事を願って。
そうして、黒羽扇で指示を出す。
手足のように動いてくれる彼らは、少しでも怨嗟の心を晴らす為に殺し続けていた。
もう、敵には特殊な兵器で自分達の士気を上げる事も出来ないようだった。
バラバラと配置された“ばりすた”の攻略は白馬義従が買って出る。野戦で騎馬が優位なのは言うまでも無く、袁紹軍には神速と白馬義従に対抗出来る騎馬隊は居ない。
唯一容易な拮抗が出来そうなのは、虎の子とされている強弩部隊のみ。であっても、霞さんと詠さんが綺麗に翻弄しているから狙い定めるのは至難だろう。
開けた戦場の多段攻撃は敵の指揮系統を攪乱し、兵が入り乱れてしまう場所がそこかしこに出来上がる。
それに……曹操軍の士気は十分で、如何に数が多かろうと……敵兵達はあの人達のような武将と呼ばれる特殊な存在に恐怖を感じずにはいられない。
凪さんが氣弾を放てば蜘蛛の子を散らすように兵列が乱れる。
沙和さんをか弱いと誤解した兵達は双剣によって容易く切り裂かれる。
真桜さんが振るう螺旋槍の音に怯えず迎える敵などそうそう居ない。
霞さんの人馬一体の突撃には立ち竦む兵など草原に揺蕩う草の如く。
秋蘭さんは怪我をしていても弩の腕も一級、指揮しようとしている将が容易く打ち抜かれて崩される。
そして……覇王の大剣、春蘭さんに対して、袁家で敵う単一の武将はもう居ない。
違う。違うのだ。特に春蘭さん達のような天に愛された戦乙女達と、彼女達に追随する兵士達を止めるには……正しく血みどろの鍛錬と、決してブレない絆で繋がれた連携が無いと兵だけでは太刀打ちできない。
否、あるとすれば……絶対の忠誠から来る白馬義従のような死兵か、効率のみを追い求めて個を消し去った紅揚羽の扱う擬似死兵くらい。
この戦の為に集められただけの兵士では、たった一つの戦場では成り得ない。
袁家はもう、忠義と狂気の二つを奪われた。
負け戦の空気は迷いと臆病な方の生への渇望を生む。見れば逃げ出す兵や、投降する者が多かった。戦では当たり前のこと。誰だって死にたくないし、無駄死になどしたくないのだから。
鬼気迫る白馬義従の怨嗟は敵を恐怖させるに足りていた。そしてまた……憎しみを持つ部隊が一つ。
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