変わらない黒
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と同じなんだと気付いて、自然に口元が綻んだ。
心底羨ましく感じる程に暖かい絆で結ばれた徐晃隊や張遼隊、夏候惇隊に親衛隊。延津に於いて夏侯淵隊の絆も見せつけられた。官渡では、真桜の工作部隊ですら似たようなモノになっていた。
もう少しこいつらと話しておけばよかったかもしれない。いや、今気付けただけでも大きい。
「ありがとう。行って来る」
そう言って戦場を駆けて行く彼女を見送りながら、副隊長はやれやれと首を振る。
「なんだかなぁ……徐晃様が来てから、随分と上の方々も変わったもんだ」
厳しさはそのまま。けれども何処か優しさも増えたと思う。
――そして俺らみたいな兵士も……
黒の部隊の方を一寸みやって、男は笑った。
「はっ……徐晃隊、か。あのバケモン部隊はホント怖ぇ。常に死んでもいいような戦いなんざ俺らには出来ねぇけど……俺も副隊長だし、皆にかっけぇって言われるようになりてぇなぁ」
噂で聞いた誰かの話。
一人の男が居た。
命を賭けて次元の違う化け物に追いつこうとした凡人。
血反吐を吐いて積み上げた武と、憧れの武将から絶対の信頼を与えられていた兵士達の標。曹操軍の兵士は皆知っている。
兵士であれど、名を上げたいし良い暮らしだってしたい。それらとは別に、本当は諦めていた姿をその一人の男は示していた。
男に生まれたなら、意地がある。
守れないならせめて背中を任せろ。その程度出来ずして、何を以って誇りを語るのか。
華琳が作り上げた、曹操軍に根付いている誇り持てという精神は……変化することなく、意地という子供のような感情で乗算され、軍の全てが引き上げられていた。
†
その時の斗詩の絶望は計り知れない。猪々子と付かず離れずの距離を維持するはずが、兵達の士気低下が想像以上であったことと、曹操軍の計略の対応の為に広く構えるしかなくなっていたのが一つ。
加えて、一番出会いたくない人物は来なかったものの、袁家を恐怖に落とし続けてきたあの部隊が何処からか現れたのだ、気が動転しないわけがない。
シ水関で見せた参列突撃は的確にして迅速。使われる側としては、これほどまでに行動制限が強いられるのかと驚愕に支配される。
僅か短時間で死んでいく兵士が多すぎる。出来る限り内へ内へと強い小隊を回していたが、それも此処まで。
アレを抑えられるとは思ってはならない。
――黒麒麟は……例え自分の部隊の兵士全てが死に絶えようと、結果を得るまでは攻撃を辞めない。
誰かに任せるを良しとせずに自分達で戦うクセがある……と、斗詩は聡く気付いていた。
普通の人物なら、精強な兵士の被害を出来る限り減らすように戦う。攻勢に出ていても、勝ち戦でも、通常はそれが正
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