第18話:疲れた心に癒しを(前編)
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学校に向かってからの俺は、先ほどの出来事を忘れようとがむしゃらに茶道部の新歓活動のバックアップに勤しんだ。途中、同じような眩暈を起こしたが、無事与えられたタスクを満足にやりきることができた。ただ、俺の立ちくらんだ姿を見た飛羽と夕月は、体調が芳しくないのを察知したのか、冗談やいつもの漫才を繰り広げることはなかった。逆に気を遣われたくらいだ、あの二人に。明日雨が降るんじゃないのかと疑ったくらいさ。
練習、そして新勧活動も終えた後は、ひと時の休息を得るべく、俺は午前中の授業で貪欲に眠った。中学や高校で朝練のある部活、大学生で体育会に所属していた人なら分かるかもしれないが、朝に精も根も尽きている時には朝の授業や講義は絶好の体力回復の機会なのだ。何処かで体力を回復しておかないと、夕方の練習はおろか昼まで持たない可能性がある。ただ、これを実践すれば、学生の本分は勉強であると主張する先生諸君からはさぞウケの悪い問題児と見られるためにおススメできない。
それでも、今年は授業中であっても席に着いていた。それには、理由があった。
(本当なら、今年も屋上や図書館、保健室で日向ぼっこでもしていたかったんだけど、今年はな……)
俺は欠伸を噛み殺しながら、隣の席の女子、我らがクラス委員長を横目でちらりと見た。
ぼんやりした俺とは対称的に、塚原響は黒板を真剣な表情で見やり、視線をノートに落とし鉛筆をノートにさらさらっと走らせていた。本当にたったそれだけの何気ない事なのに、どこか知的な雰囲気が醸し出されているように感じられた。この姿を絵に残して置いたら、後年価値がでるんじゃないのかとさえ思えてくる。さすがは後年、医学部で医者としての道を歩むだけのことはあるな、と俺はたいしたもんだと感心させられてしまった。
そう、俺の生活態度の変化は、響がクラス委員長に立候補して当選してしまったからである。サボろうと思えばサボれるのだが、流石に響に負担をかけるような事は表立ってしようとは思えなかったのだ。もしかしたら、これが狙いだったのかもしれない。そうなら、とんでもない小悪魔だ。食えないヤツめ……
それから数秒過ぎたのか数分過ぎたのか良く分からない。分かっていたのは、俺はどうやら寝てしまっていたようだ。意識がおぼろげに戻ってくると同時に、肩をゆさゆさ揺らされている感覚と誰かが俺を呼んでいる声が聞こえてくるのが分かってくる。
「こら、遠野君! 授業中よ!」
「痛っ!」
大きな声に次いで、パコッと小気味の良い音が俺の頭部の衝撃と同時に訪れた。じんわりと頭に軽い痛みが広がり、右手で頭を押さえながら顔を上げた。顔を上げた先には、呆れ顔の国語教諭・カワカミ先生が目の前に立っていた。彼女の手に
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